たったひとつだけ塗り替えたい過去が…「字が読めない」
ツユ子さんと結婚後は、運転手や塗装業など興味のある仕事に次々に挑戦。12年前、ツユ子さんの親族が住む岡山にやってきました。やりたいことは全部やってきたと語る、倫夫さんです。しかし一つだけ、塗り替えたい過去がありました。

(横井倫夫さん)
「料理の配達に行くときに『どこそこに行きなさい』と言われて配達に行くじゃん、おかもちを持って。その字が分からんでな、読めんで」
太平洋戦争の終結後。人々の生活は、すぐに豊かにはなりませんでした。学校に通う余裕がなかったり、軍の手伝いに駆り出されたりと、子どもたちの学習の機会が後回しにされることも少なくなかったといいます。倫夫さんも、文字や数字をきちんと学習できないまま中学校を卒業しました。
(横井倫夫さん)
「配達の時いつも泣いとった。本当…」
(横井ツユ子さん)
「思い出さんでもええが」
(横井倫夫さん)
「昔を思い出したら泣けるわ。悔しかった、字が分からんからな。だから学校へ行く気になった。どうしても行きたかった」

中学卒業後、時間をかけ独学で文字を学んできたという倫夫さん。それでもぬぐい切れない悔しい思いを払拭したいと、今回「夜間中学」への入学を決めたのです。背中を押したのは、ツユ子さんでした。
(横井倫夫さん)
「頑張って行けるわってお母さんが言うから。反対されることはないな、絶対に。僕がやることは」