「量から質へ」個人旅行客の消費をどう促すか
【住】ここまで現状を見てきましたが、平家さん、中国からのクルーズ観光を地域経済にとってプラスにするためには、どのような視点が必要でしょうか?

【平】クルーズ船上陸後のツアーを手配するランドオペレーター、とりわけ中国系のクルーズ客を対象としたランドオペレーターは、現在、長崎にはありません。団体ツアーの顧客はある意味“囲い込まれて”しまい、どうしても地元経済への直接的な恩恵は限定的です。
しかし一方で、個人で長崎を巡る中国人観光客が増えています。まだ少ないかもしれませんが、この層にいかに長崎の魅力を伝え、消費を促すかが重要になります。それこそが今回のテーマの「量から質へ」の意味するところです。
こうした新しいタイプの中国人観光客が何を求めているのか、何にお金を使っているのかを把握して、それに合った商品やサービスを提供していかなければならないと思います。
新しい中国駐長崎総領事が、多くのクルーズ船観光客を長崎に呼び込むことに意欲を示しているという報道もありましたが、中国人の嗜好を捉えて「長崎に来たらこれを食べないといけない」とか「これを買わないといけない」といった「長崎にしかないコンテンツ」を提供していくことが大切です。例えば、新鮮な魚は長崎が誇るコンテンツです。
また、インバウンド受け入れを推進する県や市、コンベンション協会などは、中国人の消費傾向などを分析して地元企業に「売れるコンテンツ」を提案したり、ランドオペレーターへの働きかけ、多言語対応や多様な決済手段の導入など支援を行う必要があると思います。今、日本に多く来ている外国人は、韓国、中国、台湾、米国、香港ですから、多言語化も、韓国語、中国語の簡体字と繁体字、英語は必須です。
文化の違いを理解し尊重しながら、アジアからの新たな観光客の流れを地域経済の活性化に繋げるための知恵と工夫が、今の長崎には求められています。
さらには、クルーズ船の観光客の活動時間は、お昼だけですので、宿泊業者や夕食関連の飲食店における消費には貢献しません。観光消費を拡大させるためには、クルーズ船だけでなく、やはり国際線の拡充などにより長崎に泊まってもらえるようなインバウンドの強化が必要だと思います。これも「質」を求めるためには必須です。