先月、二度の台風に襲われた、東京の八丈島。土石流が直撃した地区では町が従来、避難所として指定していない場所に住民を誘導していたことが分かりました。

けさ、八丈島の小学校で行われた運動会。子どもたちが披露したのは、島伝統の「石投げ踊り」です。

児童
「台風とかいろいろあって1日やる予定だった運動会も午前中だけになっちゃって、ちょっと寂しいなっていう気持ちはあるんですけど無事にできてよかったです」

先月、島を立て続けに襲った台風22号と23号。建物やライフラインへの被害が相次ぎ、およそ3週間たった今でも300世帯以上で断水が続いています。

土石流が直撃した南東部の末吉地区。

記者
「もともと小学校だった場所ですが、大量の木や土砂が直撃しました。窓は原型をとどめていません」

泥や流木が建物を覆い、流れ込んだ勢いのまま残されています。

この場所は、実は町が設定した“避難所”だったといい、住民19人と町の職員ら3人が身を寄せていました。そのうちの一人だった杉田秀徳さん(51)。

土石流被害に遭った 杉田秀徳さん
「誰かが『来た』という声がして、そしたら泥水がじわっと入ってきた。近くに90歳ぐらいの杖をついたおばあちゃんがいたので、おばあちゃん逃げるよって言って抱きかかえて逃げかけたんですけど、ものの10秒ぐらいで土石流が腰までやってきて」

女性を抱えながら何度も土石流に足をすくわれ、“死”を覚悟したと言います。

町が6年前に作成した土砂災害のハザードマップです。そこには「公民館の2階のみ」が避難所に指定されていました。しかし、町が当日、住民を避難させたのは一部が「土砂災害警戒区域」となっている平屋建ての交流施設でした。

杉田秀徳さん
「16時ぐらいに町の避難指示が出て、八丈島で最も命の危険があった場所が避難所だったことは不思議でならない」

なぜ、この交流施設に住民を誘導したのでしょうか。町長を訪ねると…

山下奉也 町長
「木造ではないコンクリートの建物ということで、まだ暑かったから冷房施設のある場所ということで設定した」

もともと避難所に指定していた公民館には冷房がなかったため、熱中症対策として別の場所に誘導したと言います。

記者
「島民の命を考えたときにどちらを選択すべきだった?」
山下奉也 町長
「それは難しいですね。結果がこうなると分かっていればもちろんそっちにしたけど。結果としてはまずかったと思っています」

島で現地調査を行った専門家は、この判断に異を唱えます。

八丈島で現地調査 横山芳春さん
「ハザードマップでの避難所設定があった中ですから、まずはそこ自体は生かそうよというのが最低限。(公民館を)避難所として決めたのであれば、インフラとかも含めた形で避難できるような体制を整えておくことが望ましかった」

大きな爪痕を残した災害からまもなく1か月。

杉田さんは、改めて人命を最優先にした防災対策を町に求めていきたいとしています。

杉田秀徳さん
「誰も死ななかったのが奇跡と言ってもいいぐらいの土石流災害。今回のミスをしっかり認めて今後の安全対策はやってもらいたい」