■「景気後退は仕方ないとして、金融危機をどう回避するか」


10月11日にIMFが発表した世界経済の見通しによると、世界では2023年は0.2ポイント引き下げて2.7%、アメリカは前回から変わらず1.0%、ユーロ圏は0.7ポイント引き下げ0.5%としている。

――ヨーロッパの引き下げ率が大きく、中国も5%にほど遠い。新興国も含め世界全体で2.7%の成長というのは同時不況ということか。

ニッセイ基礎研究所 矢嶋康次氏:

かなり低いですね。特に2022年から2023年でアメリカ、ユーロと成長率がガクンと下がるので、ここが景気後退に陥る局面ではないかと理解されていますアメリカ・ユーロよりも日本の成長率がダントツ高くなってしまうのは、初めて見ました。

――こうなると景気後退入りで何が心配されるか。

ニッセイ基礎研究所 矢嶋康次氏:

過去のアメリカの景気後退はだいたい11か月ぐらいで終わる。来年で終わるかどうかが焦点になってくると思います。問題は深さ。金融危機が起きるかどうかです。金融危機はもう何回も経験しているので規制が非常に厳しくなり、なかなか起きないようにはなっています。
ただ、心配なところがいくつかあります。今回ゼロ金利から始まっているので、コストゼロのお金が異常に出ているというのがひとつです。もうひとつは、金利が上がるスピードがあまりに速すぎるので、それに対応しきれているのかどうか。これから起きることは、規制で見えているところは大丈夫なのですが、今まで見えていないところから金融の不安の芽が出てくるのかどうかというのが、金融危機につながるかの非常に大きなポイントになってくると思います。

――昨日までゼロ金利で借りていた会社が、借り換えようと思ったら「金利5%です」というような状況になる。そうすると倒れる企業が出てきても当然で、それが金融危機につながれば景気の後退がより深くなってしまう。

ニッセイ基礎研究所 矢嶋康次氏:

景気後退はある程度仕方ないとして、金融危機につながらないように各国対応してくると思いますし、リバウンドをどう政策で描いていくのか、そちらの方に政策シフトしていくと思います。

――かつては住宅ローンやノンバンクが火種になった。そういうところに気をつけなければならないのか。

ニッセイ基礎研究所 矢嶋康次氏:

過去の金融危機は分かっていたところからは起きていない。今回も起きるとすれば、考えられているところではないところから起きるはずです。