■円安なのに輸出数量伸びない日本…「構造的問題に着手しないとまずい」

日本で今一番心配なのは円安だ。148円の後半まで行き、前回の介入時よりかなり円安が進んだ。いつ次の介入があるのかと警戒感が広がっている。1998年のアジア通貨危機が円安の壁だったが、それを超え90年以来となった。90年はバブルの終盤で、世の中が不穏になってきたとき。今は危機ではないのに当時のレベルまで円安が進んでいる。問題は根深い。

ニッセイ基礎研究所 矢嶋康次氏:
海外から見ると日本の物は非常に安くなってきていると思います。安くなっている日本の物が買われるかというのが非常にポイントになってきており、経済が回復するためにはお金やビジネスが日本に入ってこないといけないので、そういう政策がこれから日本で打たれるかどうかというのがポイントかなと思います。

――「構造的転換を」と柳井氏が述べていた。その構造とは?

ニッセイ基礎研究所 矢嶋康次氏:

例えば海外から日本に投資した時に、株がパフォーマンスを発揮して株価が上がるような将来像を期待できるかどうかだと思います。いま日本は少子高齢化もエネルギー問題も何も手つかずで、将来に対して明るさが出てこないので、今こそエネルギー問題などもガンとやるという姿勢を示すことが非常に政策として必要だと思います。

13日に出た日本の9月の企業物価指数は9.7%となっている。

――円安も進んでいるし、企業物価も上がっている。川下への波及はしばらく続きそうか。

ニッセイ基礎研究所 矢嶋康次氏:
そうですね。波及が進んでどんどん物価が上がる方向になると思いますが、企業がもう吸収できなくなってくるので、収益的に弱くなってくると思います。円安でひとつ期待されるのは、輸出が伸びると言われて、そこで吸収できる分が出てくればいいのですが。

――円安は全体としては日本経済にメリットだと言われてきたが。

ニッセイ基礎研究所 矢嶋康次氏:
輸出は伸びていますと。ただし、価格と数量を分けてみると、全く数量が伸びなくなっているのです。

――円安が進めば輸出数量が増えると言っているが、数量はむしろマイナスになり、見かけ上輸出額が増えているのは、ドル建ての価格を円換算した時に円安で膨れているからだということか。

ニッセイ基礎研究所 矢嶋康次氏:
世界経済のこれからの見通しを考えると、輸出金額はもっと減ってくることになるので、そうすると円安のメリットがなおさらなくなる。そう考えれば、やはり日本の構造的な問題にも少し着手しておかないと、どうしてもまずいことになってくると思います

(BS-TBS『Bizスクエア』 10月15日放送より)