●時局防空必携
「焼夷弾も心掛けと準備次第で容易に火災とならずに消し止め得る」
◆焼夷弾の炎は消せるのか? 当時の消火を再現 火たたき棒でたたいて…
焼夷弾の中にはゼリー状のガソリンが入れられていて、
火がつくとガソリンが飛び散り、家の壁や柱にへばりついて燃え続けるようになっていた。
これに対して、当時は焼夷弾の火は、バケツの水、竹や縄でできた火たたき棒などで消せるとされていた。
当時の消し方で、“焼夷弾の火”は消せるのか?専門家監修のもと、実験を行った。
木の板に布をまきつけてガソリンを染み込ませ、焼夷弾の中身が床などにへばりついた状況を再現。
点火すると瞬く間に激しく燃え上がった火。
資料を元に作った火たたき棒を水につけ、叩いたり、こすったり。
3分以上、巻きつけた布がちぎれるほど繰り返すも、火を完全に消し切ることはできなかった。

続いて、バケツの水をかけてみるが、計8回かけても消えなかった。

●火災に詳しい 東京理科大・松山賢教授
「ガソリン自体が水を弾いてしまうことが起こりますので、水をかけて消火するというのは、消せる状態には程遠いんじゃないかなと。(ガソリンを)固めたことによって、なかなか消えにくいというところにプラスされて、継続的な燃焼が起こり得る」
ゼリー状のガソリンに見立てた布は、水に浸ってもなお燃え続けていた。

●実験を監修 東京理科大・桑名一徳教授
「ガソリンは蒸発した気体に火がつくことで燃えるんですけども、その蒸気が色々なところにありますから、火を完全に消すことができれば消える。しかし、火が少しでも残っているとそこから蒸気に燃え移って燃え続けますので、いつまで経っても火を消すことができない」
実際に焼夷弾の火を消そうとした、小林暢夫さん(94)。
”油の火の玉”をまえに、「何をしても消えなかった」と証言した。