発端となった『風流夢譚』
事件の発端は『中央公論』に掲載された深沢七郎氏の短編小説『風流夢譚』でした。

この小説には、夢の中の出来事ではあるものの、実在(しかも実名)の皇族たちが架空の革命のために首を切られるなどというシーンがあり、これが不敬でふざけている上に下品だと右翼の憤激をかっていました。

これらの描写には一般読者も眉をひそめ、朝日新聞なども「人道に反する」「夢物語だから許されるというものではなかろう」と非難しました。
結局、中央公論は宮内庁に謝罪の意を示し、61年の新年号に「お詫び」を掲載しましたが、右翼団体は収まらなかったのです。
去年も17歳、今年も17歳
犯人は事件後、約10時間で自首しました。長崎県出身の17歳の少年Aでした。この17歳という年齢は前年に社会党・浅沼稲次郎委員長を刺殺した事件の犯人と同じだったために、社会は大いにショックを受けました。
犯行の動機については「作者も悪いが、それを売って金を儲ける社長はなお悪い」と供述したといいます。
この年はちょうど上皇陛下のご成婚の翌年であり、いわゆる「ミッチーブーム」の最中であったことも影響したとも言われています。