「もういいです」避難を諦めた隣人を背負い高台へ
出村さんの隣には、40代の姉妹が暮らしています。姉は病気で足が不自由で、妹とともに玄関で行き場を失っていました。
出村正幸さん
「姉は『もういいです、諦めます』と気弱になっていた。『大丈夫、私が背負っていくから』と言って、おんぶした」
出村さんは女性をおんぶして、水浸しになった集落から高台へつながる階段を駆け上がり、間一髪で津波を逃れました。
東日本大震災を機に避難訓練繰り返す
出村さんが高台に避難する際に使った99段の階段。実は、東日本大震災の前にはなかった物です。

正幸さんの父で、下出地区の区長を務める出村正廣(77)さんは、住民の意識が大きく変わったのは、今から14年前だったと振り返ります。
出村正廣さん
「東日本の震災をテレビで見ていたんですよ。トラックの荷台に男の人が2人乗っていたら波が来るんですよ。ああ逃げないといけないと、テレビに叫んでいたが、そのうち波が来て画面が消えてしまった。ああ、あの人は助かってないなと。そういうのを見ているから、波が来たら早く逃げないといけないと、津波のおそろしさが分かっていた」
長年、消防設備などの工事を手掛け、防災士の資格も持つ奥濱勇信さん(74)が中心となって、2011年から避難訓練を行うようになりました。

高台にある集会所まで避難する訓練を繰り返すうちに、新たな課題も見つかりました。