口論に至った“3つのポイント”

元外務事務次官 薮中三十二さん:
理由として考えられる一つめが、プーチンという人をどう見ているのかが、トランプ大統領とゼレンスキー大統領で全然違っていた。
トランプ大統領は「プーチン氏は俺のことをリスペクトしてるんだ」と考えている。
大体トランプさんは「ディール(取り引き)」が好きですからね。「強い相手が好き」ということで「一にプーチン、二に習近平」と言われていますけれど。
そういう意味では、トランプ大統領は決してマイナスで見ていなかった、しかしゼレンスキー大統領からすれば、自分たちの国を侵略してきた男です。この違いがあるんです。

二つめ、首脳会談などの「プレス(報道機関の撮影)」は冒頭の入った2~3分だけですが、今回は50分もカメラがあの場に入ったままでした。
あれはやり方がおかしかったと思います。また他にも私が良くなかったなと思うのは「通訳を使わなかったこと」です。
ゼレンスキー大統領はこれまでも会談を経て、かなり英語が上手くなっていると思います。しかし、細かいことを言ったり、ワンテンポ置いて間を持ったりするためにも通訳は入れるべきだったと思います。
三つめが「トランプ大統領は怒らせてはいけないんです」これがポイントなのです。トランプ大統領は「自分が批判されている」と思うとキレるのです。
映像の50分のうち、40数分間は何の問題もなかったんですが、ずっと我慢してじっと聞いていた。ゼレンスキー大統領もいろんなことを言いましたけれど、聞くことに徹していた。
そんな中で「キレた瞬間」があった。最後の3~4分のやりとりの中にあるんです。
ゼレンスキー大統領が「あなた方、アメリカに住んでいる人たちは大きくて綺麗な海で隔てられているからあんまり感じないでしょうけど、将来(ロシアに侵攻された)私たちと同じことを感じるのかもしれません」と皮肉めいたことを言ったんです。それでキレてしまった。
なぜそこでキレるのか分かりにくいのですが、会談の10日前にトランプさん自身が「我々、ロシアとウクライナの問題については“大きな綺麗な海で隔てられている”」つまり「基本的にはヨーロッパがちゃんと責任を持つべきだ」と話したんです。
それを“ゼレンスキー大統領がその発言を逆手に取った”と思ったんですね。
自分が批判されたと思い「何故、アメリカが隔たれていると言うのがダメなのか」とそこから声が全部変わるんです。
これからどうなるのか。ヨーロッパの首脳が集まりますが、それぞれゼレンスキー大統領を支援するわけですが「このままではいけない」と(鉱物資源の協定を)アメリカ・ロシアだけでやろうとするのを、戻そうとした。
場合によってはゼレンスキー大統領に「もう一回アメリカに行こう」と言うかもしれません。トランプ大統領も「もし『ピース』平和について話すのであれば、いい」と。
これからの展開がどうなるのか、注目ですね。
(サンデーモーニング 2025年3月2日 放送)
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<プロフィール>
薮中三十二さん
元外務事務次官 大阪大学特任教授
「グローバル寺子屋 薮中塾」を主宰