元外務事務次官が見た“前代未聞の首脳会談”

膳場貴子キャスター:
決裂に終わったアメリカ・ウクライナの首脳会談。双方がそもそもどういった合意点を目指していたのか振り返ります。
中西悠理キャスター:
今回両国が署名するとみられていた合意文書ですが、ウクライナ領土に埋蔵されている「レアアース」など鉱物資源の権益に関するものです。
ロイター通信は、トランプ政権としては、これまでアメリカが実施した巨額の「ウクライナ支援の返済」と位置付けていて、一方ウクライナが求める「アメリカによる安全の保証の確約」は盛り込まれていなかったと報じています。

ウクライナが求める「安全の保証」ですが、NATO加盟に対するアメリカの支持やアメリカの軍事支援の継続などが挙げられます。トランプ大統領はNATO加盟について「そのようなことは起きない」と述べ、否定。
ウクライナでの鉱物資源の権益を念頭に、「我々(アメリカ人)の多くが行って働くところで、誰もおかしなことをしようとするとは思わない」と発言。
アメリカの関与がウクライナの安全の保証に繋がるという認識を示しています。
そして軍事支援については、今回の首脳会談が決裂したことを受け、ワシントンポストなどは「トランプ政権がウクライナへの軍事支援停止を検討している」と報じています。
膳場キャスター:
外交官として様々な交渉の現場に立ち会っていた薮中さんは、今回の首脳会談をどう見ましたか?
元外務事務次官 薮中三十二さん:
本当に前代未聞の首脳会談ですよね。「こんなことが起きるんだ」とびっくりしました。私もずっと外交交渉を見てきましたが、こんなことが起きたことはないです。
これは結果的にアメリカ、それからウクライナ双方にとってダメージがあると思います。トランプ大統領、本当は「ピースメイキングプレジデント」と“平和を作る大統領”として歴史に残りたいと思っていたはずが、それできなくなったわけです。
もう一つはトランプ大統領は「レアアース」鉱物資源に関心を持っています。
ようやくその交渉の場ができたにも関わらず、少なくとも当面駄目になっていますよね。
そういう意味ではトランプ大統領にとってもマイナスダメージ、でもより大きなダメージがあったのは、ゼレンスキー大統領の方です。
何といってもロシアと戦うにはアメリカの支持・支援が必要です。それがこんな形で決裂した。これはゼレンスキー大統領により大きなダメージがあると思います。
どうしてこんなことになってしまったのか。