これほど複雑な制度になったワケ
これほどまでに複雑な仕組みなってしまったのは、財源が限られている上に、単純な基礎控除の拡大では、所得の多い層ほど減税額が加速度的に大きくなってしまうからです。
例えば、国民民主党が求める178万円まで壁を引き上げるため、基礎控除拡大だけで対応するとなると、基礎控除は65万円の引き上げになり、税率5%が適用される低い所得の人は3.25万円の減税に留まる一方、税率40%の高所得の人は26万円もの減税になってしまうからです。
「103万円の壁」がわかりやすく、政治的に大きなインパクトを与えたことは確かですが、基礎控除拡大という手段だけで、インフレ修正のための減税をすることは無理があったと言えるでしょう。
新たな与党案は、課税最低限を160万円まで引き上げることで、働き控え抑制を解消すると共に、インフレの打撃が相対的に大きい低所得者に手厚い減税にしつつ、減税規模を抑えるよう、いわば財務省の英知を結集して複雑怪奇な制度を作った形です。
確かに、減税額という仕上がりを見れば、高所得者を除くと、どの所得層でも大体、年間2~3万円の減税になるようになっています。