選挙報道の人材育成という課題

そもそも選挙はPDCAサイクル(注2)が機能しづらい分野である。選挙は毎年あるわけではないため、記者の経験値がなかなか上がらない構造があるからである。また選挙制度が研究者すら理解しづらいほど複雑であることがそれに輪をかけている。

(注2)PLAN(計画)、DO(実施)、CHECK(評価)、 ACTION(改善)の4つの視点をプロセスの中に取り込むことで、プロセスを不断のサイクルとし、継続的な改善を推進するマネジメント手法のこと

実は、筆者がこれまで行ってきた研究の中には、マスメディア関係者との交流がきっかけのものが多い。

政党相乗り選挙の研究は北陸新幹線金沢延伸との関連性に問題意識を持っていた北陸中日新聞との連携で進められたものであるし、平成の大合併についての研究は北陸朝日放送のドキュメンタリー番組と深くつながっていた。農業従事者意識調査は朝日新聞仙台総局との連携の中進められたものであるし、近年行っている地方議員のなり手不足に関する研究もNHKが実施した地方議員アンケート調査への協力が端緒である。

人口減少によって日本全体がシュリンクしていることに加え、広告料収入が減る中で選挙報道にかかる人材育成をテレビ局だけで行うことは容易ではないかもしれない。

我々研究者も人材育成にどう貢献するか、問われているように思う。

〈執筆者略歴〉
河村 和徳(かわむら・かずのり)
1971年静岡県生まれ。
慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程を単位取得退学後、慶應義塾大学法学部専任講師(有期)、金沢大学法学部助教授を経て現職。
2025年4月より拓殖大学政経学部教授。
専門は政治学、日本政治論。東日本大震災以降、被災地における政治・行政の分析や、電子投票など選挙ガバナンスの課題などに力を入れて研究を行っている。
著書に「電子投票と日本の選挙ガバナンス(慶應義塾大学出版会、2021年)」など。

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。