【提言2】時間軸を意識した選挙報道

出したい情報を出す候補者や政党、そして刹那的に視聴数を追求する動画配信者たちは目先の利益に注目しすぎて、提供している動画のもつ歴史的な価値はあまり関心がないと思われる。動画を個人で保存する容量が限られているのが一般的であるし、動画を長期にわたってアップしておくインセンティブが見当たらないからである。

しかし、テレビ局には過去の(それもインターネット選挙運動解禁以前の)映像がアーカイブされている。このアーカイブはテレビ局にとっての資源であり、現職候補の公約の検証や選挙風景の変化など、有権者に気づきを与える選挙報道を創り出すことができると思われる。

たとえば、現在、筆者は非言語情報が政策認知や投票行動に与える影響についての研究プロジェクトに参加しているが、投票行動を左右する情報は文字だけとは限らない。候補者の笑顔や声のトーン、候補者が行う辻立ちを囲んでいる面々の表情やその年齢構成、こうした非言語情報も投票先を考える上で有効な情報になる可能性もある。非言語情報の記録もあるテレビ局には、大きなポテンシャルがあるのである。