順大OB、またはルーキーの3年連続日本人トップはあるか?

23年は近藤亮太(25、三菱重工)が1時間00分32秒で日本人1位の3位、昨年は四釜峻佑(24、ロジスティード)が1時間00分41秒で優勝した。

駅伝ファンは実業団の試合でも選手の出身大学を気にするが、近藤と四釜は2人とも順大出身のルーキーだった。今大会の出場選手では石井一希(23、ヤクルト)がその条件に該当する。昨年12月には28分22秒68と10000mで自己新をマークした。トラックのタイムは少し物足りないが、長居距離やロードへの適性が高ければ可能性はある。大学1年時に出した1時間02分09秒のハーフマラソン自己記録は、大幅に更新するのではないか。

ルーキーに限定せず、順大出身またはルーキーの“3年連続”日本人1位と条件を設定すれば、どんな選手が該当するのか。

順大OBでは田中秀幸(34、トヨタ自動車)、西澤侑真(24、トヨタ紡織)、野村優作(23、トヨタ自動車)、伊豫田達弥(24、富士通)らの名前が挙がる。田中は昨年のニューイヤー駅伝5区区間賞選手で、今大会に優勝する力は十分ある。ただトヨタ自動車の熊本剛によれば、「田中と丸山(竜也・トヨタ自動車)は東京マラソンへのステップ」という位置づけで、61分30秒~62分00秒を目安に走る。

勝負強さが感じられるのは伊豫田で、22年の関東インカレ10000m優勝、23年東日本実業団駅伝6区区間賞などタイトルを取ってきてきた。

西澤と野村は、前回優勝の四釜と同級生選手。「西澤が優勝に意欲を持っているみたいで、野村も負けられないと思っているようです。野村と内田(隼人・トヨタ自動車)はニューイヤー駅伝を外れて、この大会にかける思いが強い」と熊本監督。

ルーキーでは城西大出身の山本唯翔(23、SUBARU)、駒大出身の安原太陽(23、Kao)と白鳥哲汰(23、トヨタ紡織)、石井、関西学院大出身の守屋和希(23、三菱重工)、青学大出身の松並昂勢(23、黒崎播磨)らが出場する。

ニューイヤー駅伝3区区間9位の山本以外は、実業団選手としてまだまだ実績不足。だが2年前の近藤は、ニューイヤー駅伝メンバー漏れした選手だった。白鳥、守屋も今年のニューイヤー駅伝に出場できなかったが、その2人を含めて可能性はゼロではない。全日本実業団ハーフマラソンは、新人の登竜門といえる大会でもある。

女子は大塚製薬コンビと三井住友海上コンビがダークホース

女子は外国人選手のエントリーがなく、𠮷薗栞、逸木和香菜、川村楓の優勝争いと見られている。2年前の日本人1、2、3位のトリオである。

昨年12月の山陽女子ロードで1時間8分21秒をマークした𠮷薗が、「ポイント練習はできている」が、そのときと同等以上の練習はできなかったようだ。悪天候への懸念もあり、前日時点でペースは決めてはいない。

川村についても、岩谷産業の廣瀬永和監督は「ペースはまだ決めていません」と前日にコメントしている。「本人の感覚で走るので、こっちが言ってもどうなるかわかりません。途中から行く(ペースを上げる)んじゃないでしょうか」

逸木は10000mで31分58秒59と、日本トップレベルの記録を持つ選手だが、昨年1年間は33分を切ることができなかった。今回に関してはハイペースで引っ張る走りは考えにくい。

しかし棚池穂乃香(27)と福良郁美(27)の大塚製薬コンビが、1時間9分台前半を狙ってペースを作れば面白くなる。棚池は昨年10月のプリンセス駅伝5区区間賞選手で、マラソンでも2時間23分30秒の東京2025世界陸上参加標準記録を狙う力がある。福良は一時期動きが崩れていたが、1時間09分58秒の自己記録を持つ。

そしてハーフマラソンの実績は乏しいが、兼友良夏(23)と小林成美(24)の三井住友海上コンビが大化けする可能性がある。

兼友は昨年の日本選手権10000m3位と、この1年のトラックの戦績は参加選手の中で一番良い。小林は22年のオレゴン世界陸上10000m代表(新型コロナ感染で欠場)。近年は状態が上がらず入社後2年間は目立った戦績がないが、少しずつ復調してきている。

兼友が前半から飛び出す可能性はゼロではないが、そこまでハイペースにはならないのではないか。どこで、誰がペースを上げるのかが焦点になる。ペースアップの仕方次第では、1時間9分台前後の優勝記録が期待できる。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

※写真は伊藤達彦、𠮷薗栞