「学生のヘルメット着用義務化」に当初は複雑な思いも

事故を起こす大人が悪いのに、そちらは後回しにして、弱い立場の高校生に負担を押しつけたように思ったため、「義務化」と聞いてとても不満だった渡邊さん。

そして同時に渡邊さん自身も、その大人の一人として子供たちに対して責任を感じていました。それから半年後に渡邊さんの考えを変える大きな事件が起こります。

(渡邉明弘さん)
「愛媛県立松山南高校の女子生徒が、朝の通学途中に青信号で横断歩道を渡っていたところ、右から、赤信号を無視した車が女子生徒をはねたあと、止まることなく逃げるというひき逃げ事件でした」

「後に逮捕された後、飲酒運転だったこともわかりました。女子生徒は、意識不明の重体になり、ニュースを見た私は助かるとは思いませんでした。しかし、20日後に奇跡的に意識が戻り、その後、元気に過ごしていると聞きました」

「このとき、女子生徒はヘルメットをしっかりかぶっていたので、ヘルメットが割れて犠牲になり、女子生徒の命を救ってくれたと考えられます」

「このときに私も心の中で変化が起こりました。ヘルメット着用義務化は正しかったんだ。今ある命を守るために教育委員会やPTAでできる最大限の行動だということを知りました」

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「現在、全国で自転車の事故が増えています。その結果、2023年4月に道路交通法が改正され、自転車に乗る全ての人にヘルメットの着用が努力義務となりました。そのことで全国ニュースで愛媛県はヘルメット着用率全国一と頻繁に報道されます」

「しかし、その始まりは決して喜ばしいことではなく、私たち大人の安全運転意識の低さから招いた結果なんです。そのことを反省し、現在私は、新たな交通安全マナーを広めて子供たちの命を守ろうとしています」

「写真を撮るのが好きだった大地が残した写真をスライドショーにしたので、見てください」

「これらの写真【画像⑩⑪⑫】は大地が本当に生きていたという証拠です。しかしその命はもう戻りませんし、写真が増えることもありません」

「もし皆さんのお子さんやお孫さん、大切な人や家族だったとしたら、もし今、私達の行動で、その人の命が守れるとしたら、行動しますか?」

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