11年前に愛媛県内で起きた交通事故で息子を亡くした父親が、岡山市の高校で自身の辛い記憶を語り、事故への注意を呼びかけました。
交通事故で長男を亡くした渡邉明弘さん【画像①】です。

長男の命奪った交通事故
11年前、当時高校1年生だった渡邉明弘さんの長男・渡邉大地さん(15)【画像②】が自転車で帰宅途中、自宅に近い信号のない横断歩道を渡っている際に、4tトラックにはねられました。

ヘルメットを着用していなかった大地さんは頭を強く打ち、約5時間後に搬送先の病院で亡くなりました。
(渡邉明弘さん)
「愛媛県の高校生は、自転車で通学するときはヘルメット着用が『義務』となっています。その原因の一つになったのが、私の長男の命を奪った交通事故でした」
「毎日、交通事故のニュースが報道されますが、その事故の後、被害者やその家族がどうなったのか、また、同じような事故を防ぐためにどうすればいいのか、ニュースでは伝えることができません」
「そのため、多くの人にとって交通事故は遠くの出来事であり、そこから学ぶ機会を得られず、安全意識が上がっていきません」
「私は、私の家族と同じように交通事故に苦しむ人を見たくなかったので、事故から4年後に私たち家族も苦しい経験を多くの人にお話することにしました」
帰宅後の習慣のハイタッチ この日は冷たい息子の手…
愛媛県立伊予農業高校の1年生だった大地さんは、小学生の頃から写真を撮るのが好きで、高校入学後に写真部に入り、毎日重いカメラリュックに入れて学校へ行っていました。
(渡邉明弘さん)
「海へ行って夕日の写真を撮ったり、学校の畑で花を撮ったり、生き物の写真を撮って楽しんでいました【画像③】」

「高校1年生だった2014年12月1日のことです。その日は学期末テストだったので学校は午前中で終わり、大地は昼過ぎに自転車で学校から帰宅していました」
「自宅に近い、信号のない横断歩道を渡っているときでした。左側から走ってきた4tトラックが、直前まで大地に気付かず衝突しました」

(渡邉明弘さん)
「トラックは木材を積み、時速50キロのスピードを出していたので、その衝撃は大きく、大地は横断歩道から20m先まで自転車と一緒に飛ばされて、道路に頭を強打しました。一瞬のことなので、大地は自分に何が起こったか理解できず、道路に頭を強打したために、意識がなくなったようです」
「救急車で病院に運ばれて、応急処置は行われましたが、頭の骨が大きく割れていて、脳からの出血が止まらないため、それ以上できることはありませんでした。そして、事故から5時間後に心臓が止まり、大地は目を開けることなく、亡くなりました」

「私たち家族は、家に帰ったときに、無事に帰ったことを喜んでハイタッチをしていましたが、この日、家に連れて帰った大地はもう動くことはなく、私たちは冷たくなった大地の手を自分の手に合わせて泣きました。このときから、私達家族は、長く苦しい道を進むことになります」
