「反社会的な性格に基づく選択」
2024年5月25日、判決の日。
裁判長は「公判での供述は信用できず、犯行直後での供述が信用できる」とし、①殺意の有無、②責任能力の有無について以下のように認定した。
「被告人は覚醒剤精神病の症状である幻聴等の影響により、被害者らが自分を殺そうとしていると疑い本件犯行に及んでおり、同精神障害は犯行動機の形成に直接的な影響を及ぼしているが、被告人は被害者を殺さなければ自分が殺されると確信していたわけではなく、被告人が被害者を金属バットで殴打したりしたのは、被告人の反社会的な性格に基づく選択であったと認められることなどからすると、被告人が心神喪失の状態であったとの疑いは残らず、心神耗弱の状態であったと認める」
「犯行様態は、金属バットを用いて、頭部等の急所を含め、全身に出血を伴う損傷や骨折が生じるほど、強い力で多数回殴ったというものであり、強固な殺意に基づく。危険で残忍な犯行である」

裁判所は、殺意と責任能力について、検察側の主張を支持した。
「被告人が心神耗弱の状態にあった点は、被告人に対する非難を相当に弱める事情である。ただ、精神障害は覚せい剤使用による前科を有する被告人が、自らの意思で覚せい剤を使用したことにより招いたものである点も考慮すべきである」と付け加えた。
静岡地裁沼津支部は男に、懲役7年の判決を言い渡した。
男は判決を不服として東京高裁へ控訴したが、一転、控訴を取り下げ、刑が確定した。
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