キーワードは“安心感”

岡山県の内陸部、鳥取県との国境に「奈義町」という町がある。人口約5500人のこの町は出生率を実に2.95まで伸ばし“奇跡の町”と呼ばれている。
奈義町には17年前から「なぎチャイルドホーム」という地域ぐるみで子育てをサポートする拠点が設けられている。子どもをここに連れてきていた母親は言う…。
「色んなママさんと触れ合えますし、悩みとかも相談できるので結構子育ての悩みも解消されるし過ごしやすいなぁって…」
奈義町では、地域住民が子どもを自宅で預かり合ったり、散歩に連れて行くといった子育て支援の取り組みも盛んだ。

神奈川から嫁いできた二児の母は、里帰りから戻ると奈義町の良さを改めて感じるという。
「…人と人とが凄く繋がりやすくて…。町全体で子育てをしてもらう感じで、あんまり孤独感を感じることがないです。子ども2人目3人目考えられるのは奈義町だからなのかなと…」

奈義町はいわゆる“平成の大合併”の時、住民投票で合併を否決。そして合併されないためには人口を増やすことだと町をあげて取り組んだ。少子化対策というと国もどこの自治体もまず“予算”の話になるが、奈義町はそこが違った。キーワードは“安心感”だった。
そのための施策…、
*高校まで医療費無料
*高校への就学支援金24万円/年
*空き家購入新築・リフォーム補助金
*子育ての間に少しだけ働きたい親と人手が欲しい企業とのマッチング
これらが功を奏した。

奈義町 金田知巳 副町長
「一言で言うと“安心感”という言葉じゃないかと。はじめは私たちも経済的な面だけだったんですが、財政的だけでも精神的だけでもなく、トータルの安心感。子育てのために一時的にでも仕事を辞める方もいらっしゃると思います。それで社会から離れてしまう訳ではなく、社会との接点を維持させる、そういった取り組みをしています」
安心感を充実させた結果、子育て世代の85%が2人以上の子をもうけた。さらに子育てのために奈義町に移住する家族も増えた。
これだけ子育てを重視すると当然予算のやりくりは大仕事だ。
奈義町 金田知巳 副町長
「最議員さんの数を14名から10名にとか…。職員の数についても110を90名程度に…。大きなところから小さなところまで見直して…(中略)決して奈義町以外じゃできないようなことはしていないと思います。施策の実現には財源が必要になってまいります。その手立てがどこまでできるか…」

つまり“身を切って”奇跡の町を作ったのだ。本気でやろうと思えば、全国どこの自治体もできることだ。もちろん国においてもだ。