「阿蘇の自然環境に工場系の企業っていうのが非常に似合わないというのが私の持論」

もう一つ国に頼ることなく独自の発展を遂げる地方自治体を訪ねた。熊本県、阿蘇山の麓にある高森町だ。ここには“マンガ・シリコンバレー構想”なるものがある。
高森町では去年、町唯一の高校、県立高森高校に日本で初めてとなる『マンガ学科』を創設した。マンガによる町おこしを模索した町長が、週刊少年ジャンプの元編集長でもある熊本出身のマンガ編集者の協力を得て実現した。
学校にはプロの漫画家と同様の画材、機材が常備され生徒は自由にそれを使える。さらに、地方から入学する生徒のための寮も設けた。生徒は言う…。
「漫画家さんとほぼ同じ機械が使えるって凄いことだしお金もかかるし…、楽しいしかない」
おかげで、長く定員割れで廃校の話まであった生徒数がほぼ定員となった。
充実した設備を考えると相当お金もかかっているだろうと心配したが全てふるさと納税で賄われていて地方創生交付金は使っていないという。

熊本・高森町 草村大成 町長
「住民の方含め“え~マンガ?”みたいなところからのスタート。特に教育委員会というのは当然子どもたちの成長過程の中で義務教育・高等教育にあるわけですから…。前例のないことをやるというのは…、まあまあ反対…というかほぼ反対だった…。(―――なぜマンガ学科?)地方創生では企業の誘致がよく言われるんですけど、メリットもあるんでしょうけど、阿蘇の自然環境に工場系の企業だったりっていうのが非常に似合わないというのが私の持論で…。そういう中で日本の文化の大きな柱のひとつでもあるマンガ、つまりエンタメは紙と鉛筆だけでいいじゃないですか。空気汚すわけでもないし、水が汚れるわけでもないし、つまり環境に関しても何ら問題がない…(中略)将来のエンタメ業界、マンガ・アニメ、ここを世界のマーケットとマッチングできる日本の人材を輩出していくという新しい仕事を生んでいく…。マンガやエンタメは新しい産業を生んで行く可能性が極めて高い…」

番組のニュース解説、堤信輔氏は熊本と言えば半導体が注目されているが、半導体工場は水を汚すかもしれない懸念があるのに対し、マンガ・シリコンバレーは環境に配慮している点が素晴らしいと賞賛した。泉房穂氏も絶賛する。

前明石市長 泉房穂氏
「実現には相当苦労されたと思う。そこには哲学、理念があったと思う。感動しました…」

(BS-TBS『報道1930』11月26日放送より)