あたり暗い中でも一輪の兆し。ボランティア“ヤンさん”
9/21の奥能登豪雨以降、町野町には本当にたくさんのボランティアのみなさまが泥出しや洗浄などの作業に駆けつけてくださいました。
能登半島地震の被害に追い打ちをかける浸水や土砂災害は、町野町としてもこの70年間にはなかった災害で、多くの人がなにから手をつけたらいいのか途方に暮れていました。
そんな地元の方々を支え、一緒に復旧の歩みをはじめてくださったのが、たくさんのボランティアのみなさんでした。
ヤンさんの愛称で呼ばれている長塚英治さんも、そのなかのひとりです。
1/8より能登町で寝泊まりしながら給水や物資配布・炊き出しなどの支援を行って下さり、4月からの輪島塗洗浄ボランティアや、6月の親子遠足、映画の無料上映会の開催など、フェーズに合わせた支援を7/28まで続けてくださいました。
炊き出しでは、「奥能登からゴミを出さない」をスローガンにリユース食器を使い、軽トラックに食器洗浄機を載せ輪島、能登、珠洲と走り回るなど、新たな工夫を実施してくださいました。
普段の食事に近い食器を使うことで、落ち着いて食事を召し上がることが出来たのではないかと思います。
その後、お盆明けからは、豪雨被害の山形酒田と奥能登を交互に通いながら支援を続けてくださっていた中、能登町に滞在中の9/21に未曾有の豪雨災害が能登を襲いました。
フェーズに合わせたイベントなどが計画されていましたが、ヤンさんは、それらを封印し、能登町柳田、町野町、珠洲市大谷町をはじめとした甚大な被害を受けた地域を中心に、土砂撤去などのボランティアに駆けつけてくださいました。
その後、被害状況や残る活動日数を鑑みた上で、所属していた支援団体を離れて単独で町野町に入り、浸水被害の甚大であった粟蔵地区や広江地区を中心に、泥出しや土剥ぎ、高圧洗浄などをほとんどお一人で進めてくださいました。
粟蔵地区では、もとやスーパーや再建中に被災した広江歯科医院、岡田商店の泥出しや高圧洗浄を行ってくださいました。

もとやスーパーが物資受入や炊き出しの拠点となっていたことから、炊き出し会場もある町のメインストリートから砂埃を消したい・減らしたいという思いで、早朝からの作業や夜には投光器を点けての洗浄作業を続けてくださいました。
昼夜を問わず、雨の日も変わらずに尽力くださる姿に、粟蔵地区のみなさまも本当に励まされたと、何度も感謝の気持ちをお聞きしています。
お一人で進める作業以外にも、災害復旧業者の現場監督の方と意見交換を行い、管轄等関係なく互いに町野をキレイにと話し合ってくださったりと、みなさまの思いを繋ぐことも欠かしませんでした。
日々の報道が減っていく中で、ボランティアさんの数も減少しています。
甚大な被害を前に、本格的な冬が来る前にと思うと、まだまだたくさんのみなさんのお力が必要です。
11/25は、町野町でのヤンさんの最後の活動でした。もとやスーパーさんの敷地と町野町のメインストリートから続く県道6号線の桶戸バス停方面までの、泥で茶色一色が続く風景に「せめて明るい兆しを」と、縁石が見えるまで洗い続けてくださいました。

何から手を付けてよいか見当もつかない、途方もない日々を、こうしてみなさまに寄り添って締めくくってくださり、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
「1日24時間では足りません」ヤンさんは言います。
だからこそ、たくさんの人の力が今、能登には必要なのです。
11月末までの予定だった町野町と南志見地区のボランティアセンター、「まちなじボラセン」は12月まで延長されることが決まりました。

どうか今後ともみなさまのお力添えをお願いいたします。
MRO北陸放送では、被災地の声を集め続ける藤本さんが見つめる被災地の現状をNEWS DIGで、毎月掲載します。
藤本透
シナリオライター。アプリゲーム『ノラネコと恋の錬金術』メインシナリオライター。『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』、『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル2』のシナリオ執筆に携わるほか、様々なジャンルでの執筆を手がける。石川県輪島市町野町出身で、石川県を舞台に描かれたアニメ「花咲くいろは」の小説版を執筆。2024年1月1日の能登半島地震発生以降、SNSを通じてふるさとの情報を日々きめ細かく発信している。