「今も壁を意識しながら働く人は圧倒的に多い」

20年以上前に厚労省の有識者会議で、年収の壁の問題点を訴えた女性がいる。
横浜市で子育て支援のNPOを運営する原美紀さん(57)。結婚・出産を機に、勤めていた企業を退職し、2000年にこのNPOを立ち上げた。
当初は、夫の会社からの手当てが無くなるという理由で、“年収の壁”を意識して働いていたという原さん。NPOの職員や、施設を利用する女性たちも同じような葛藤を抱えていたと話す。

――スタッフの皆さんは専業主婦の皆さん?
認定NPO法人『びーのびーの』事務局長 原美紀さん
「そうですね。何年か働いて、出産や結婚で辞めた方々でしたね」
――もっとキャリアを積みたかった?
原美紀さん
「そういう人はいっぱいいたと思います。男女雇用機会均等法が出来て、それを導入したときぐらいにバリバリやり始めた人たちなので、多分すごい葛藤があったんじゃないですかね。利用者の方も、色々話を聞くと、やっぱり夫から『それ(=年収の壁を越えること)は控えてほしい』という発言もよく聞いていたので」

NPOを立ち上げた翌年の2001年。原さんは厚労省の有識者会議に出席し、“年収の壁は実態と合っていない”と制度の改善を訴えた。しかし、その後も20年以上、根本的な見直しには至らず、多くの女性がキャリアの断絶に悩む姿を目の当たりにしてきた。
原美紀さん
「企業で働いている方の妻である方が、被雇用者で活躍していただいていますけど、やっぱりそこの壁を意識しながら働いている方はまだ圧倒的に多い」
――今も?
原美紀さん
「今もそうです」
一方で、施設を利用する子育て中の女性の価値観は変わってきていると感じている。

――皆さんのなかで、結婚とか出産を機に会社を辞めるか迷われたことはある?
利用者の女性
「ないです」
利用者の女性
「キャリアを途切れさせたくないのと、自分が使えるお金も自分の力で稼ぎたいなという気持ちがあって」
利用者の女性
「子どもを産むまで仕事を頑張って来た自分を否定したくないというか、それを捨てちゃうのも勿体ないなと」
原美紀さん
「時代は変わっているよね、確実にね」
女性の働き方が多様化するなか、時代に合わない制度設計を早急に変えるべきだと、原さんは語る。

原美紀さん
「壁を無くすという議論は、いかにそれを高くしても、遠ざかっただけで、いずれまた壁は来るだろう。損得だけじゃなくて、何を将来的に大事にしていきたいのか、という本質的な議論をした中で、今はこれを選ぶということが出来るといいなと思います」
――そういう意味で、この年収の壁の制度面を変える時期には来ている?
原美紀さん
「もう、全然来ていると思います。もっと早くやってほしかったかもしれないですね」














