なぜ政治は“年収の壁”を変えられないのか

80年代までは、専業主婦の世帯が共働き世帯を大きく上回っていた。その後、女性の社会進出が進み共働きが主流になった。

こうした社会の変化をうけ、年収の壁について、歴代の総理も見直しに言及してきた。

安倍晋三 総理(2017年1月 当時)
「103万の壁を打ち破ります」

岸田文雄 総理(2023年1月 当時)
「女性の就労の壁となっている。いわゆる103万円の壁や130万円の壁といった制度の見直し。諸課題に対応していきます」

しかし、壁は崩れなかった。中でも、批判があったのは「130万円の壁」となっている社会保険料の支払いだ。

共働きやシングルマザーは自己負担にもかかわらず、サラリーマン世帯の専業主婦の保険料は社会全体で負担している点が問題だと指摘されていた。

民主党政権で厚労大臣を務めた小宮山洋子さんは…

元厚労大臣 小宮山洋子 氏
「共働きの人もシングルの人もみんなでサラリーマンの妻の保険料払ってるんですよ。これはどう考えてもおかしいでしょう」

この制度をめぐっては2000年代初頭、厚労省の有識者会議で「女性の就業を抑制」「制度が邪魔をして就業や賃金における男女格差が固定化」などと繰り返し批判され、見直しが提言されてきた。

2009年に、政権交代した民主党はマニフェストに「新しい年金制度」をつくることを盛り込んでいた。その後、大臣に就任した小宮山さんは、制度の見直しに取り組んだが、民主党政権が短命に終わり、年金改革の機会は訪れなかった。

日下部正樹キャスター
「政治の世界ではなかなか問題の解決っていうかな、解決の見通しがついてこなかった。これはなぜなんですか」

元厚労大臣 小宮山洋子 氏
「男が家族・家庭の大黒柱で、女はそれを補助すれば良いという考え方が根強いので、それを変えるような法案が政府提出の法案として出されない。野党が出してもそれを審議しないという、そういう形が続いてきたんだと思います」