約200キロの国外脱出 日の出までに7か所の検問所通過を目指す

瀬谷ルミ子さん
「印刷するな、共有もするなと(伝えた)」
ファティマさん一家のパキスタンへの退避が決まって間もなく、瀬谷さんがファティマさんに送ったのは、一通の指南書だ。
そこには、一家で国境を越えるにあたっての、注意事項が書かれているという。
瀬谷ルミ子さん
「持ち物は、1人1個のバックパック。あとは見られたら困るような写真やデータを全て消していくこと、どういう服装をしていくとか。今のタリバン政権が望む服装に沿っている格好をしないと、その服装だけで尋問されたりするリスクが高まるので」
脱出には現地の支援チームが付き添い、潜伏先から国境まで、車で移動する。出発の前日、私たちはファティマさんに心境を聞いた。

ファティマさん
「ようやく家族の安全を確保できると思うと、嬉しい気持ちでいっぱいです。ただ、愛する祖国を後にすること、両親や兄弟と離れることは、とても寂しくもあります。最も悲しいのは母の事で、最愛の母ですから…。別れるのはとても辛いです」
そしてー。
ファティマさん(音声)
「準備は完了です。パキスタンに安全に到着できるよう、祈ります」

出発時刻の午前2時。ファティマさん一家は潜伏先を後にし、支援チームが手配した車に乗り込んだ。
支援者
「ここで待ってて、あなたはここに座って」
危険を回避するため、夜中のうちにカブール市内を抜け、国境を目指すという。
日本では、瀬谷さんが現地の支援チームと進捗をやり取りしていた。

瀬谷ルミ子さん
「けさ未明に、カブールから出発をして、今国境に向かっているところです」

カブールから国境の街・トルハムまでの距離は、200キロあまり。日の出までに、7か所の検問所の通過を目指す。
最大の難関は、カブールから出るための検問所。そして、トルハムでの出国審査だ。車を走らせること、30分。最初のチェックポイントにやって来た。

タリバン兵(取材に基づくイメージ)
「行き先は?」
ドライバー(取材に基づくイメージ)
「トルハムです」
国境地帯に向かうと聞くやいなや、車のトランクを開け、所持品を調べ始めたタリバン兵。後部座席に座っていたファティマさんと子どもたちは、兵士と目を合わせないよう、必死に寝たフリをしてやり過ごしたという。
しばらくして、タリバン兵が告げた。
タリバン兵(取材に基づくイメージ)
「行ってよし」
無事、最初の関門を通過したファティマさんたち。

これは、そのとき撮影された、車窓からの映像だ。隣の車線には、同じく国境地帯に向かうトラックが列を成している。

トルハム到着までに通過すべきは、あと5か所の検問所。深夜でタリバンの監視が手薄になり、一気に突破することに成功した。
明け方まで、あと少し。残された90キロの行程を急ぐ。待ち受けているのは、最後の難関・トルハムでの出国審査だ。














