「103万円の壁」は問題の一部に過ぎない?日本の抱える本当の課題とは
井上キャスター:
今回の選挙で玉木代表は一つの論点として「103万円の壁を引き上げる」「手取りを増やす」と、とてもわかりやすかったと思います。
しかし結局、議論をしていろいろ考えると、社会保険料などの他の壁も含めて一体で考えなくてはいけない。日本は仕組みをこんなにややこしくしなければいけなかったんですか。

星浩さん:
そもそもこういう制度設計というのはそう単純ではありません。
一方でこの税金の問題と、例えば学生アルバイトで103万円の壁があるというが、「学生が年間103万円もアルバイトしなければいけないのか」という議論もあります。7兆円、8兆円もあるならば、授業料の減免や奨学金の拡充に振り向けて、学生が長時間のバイトをしなくても済むような制度も必要となってきます。なので、税と社会保障の問題に加えて、教育の無償化の問題とも、全て重なってきます。
ホランキャスター:
物事が横に広がると、政府はより身動きが取れなくなる傾向にあると思います。そうすると縦で「一回これを解決しよう」という方が簡単なのでしょうか。
星浩さん:
一つの課題の方がわかりやすいですが、果たしてそれで問題が全部解決するのか、というと実はそうでもありません。
私からすると「103万円の壁」は全体の中のほんの一部のパーツでしかないので、むしろ教育費の減免などの方が本丸ではないかという気はします。

井上キャスター:
基礎控除の引き上げで「高所得層が有利ではないか」と言われている。しかし、減税率で見ると、低所得の人の方が大きくなるので、“額を見るのか、率を見るのか”で変わってくるところもありますよね。
星浩さん:
ただ、今の経済状況で年収1000万円の人に22万円の税収減をもたらす必要があるのかという本質的な問題があります。私は必要ないと思うんですよね。それであれば別の政策にお金を使うことを選択するのが必要かなという気がしますね。
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<プロフィール>
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身 政治記者歴30年