「軽く命削ってやってる」51歳の年でも“発展途上”

Q.「50歳の年に発展途上だと言いたい」ってずっとおっしゃってきた。もうついにその年ですが、その発展途上の感覚って今持てていますか。

イチロー氏:発展途上であるかどうかを見極めるためには、結局やり続けるしかないわけでね。50歳になると体の変化があったり、怪我したり体調を崩しやすくなったりとか。「50歳を超えたら何があるか分かんないよね」で片付けたくないから。続けていたらなぜか(球速が)4キロアップするわけでしょう。でもやってなかったら、「50歳を越えたらもうそうだよ」で終わりなんですよ。そんなこと僕は許さないっていうかそういう自分を許せないから。 女子との対戦もそう。高校生たちとの交流もそう。マリナーズでもコーチが「イチちょっと一緒に守って。スローイング今日やるから外野手は一緒にやってよ」って突然言われるんですよ。何日か前に言われるんじゃないんですよ。でも「いや、ちょっと体調がまだ万全じゃないからできない」って言いたくないです。その時にできる状態にありたいわけ。でもそれがいつ訪れるか分からない。だからつまりやり続けるしかないってことでしょう。発展途上であるかどうかは、それを継続することでしか見極めることができない。ピッチャーとしてはまだ始めたばかりだからその可能性を去年は1つ示せたわけでね。「俺は今も発展途上だ」と胸を張って言うことはできないけれど、これを続けてたらそんなことが示せるかもねとは思ってます。

Q.去年はヒット2本という結果。今年、バッターとしてイチローさんのずっと培ってきたバッティングという部分で、なにか示さないとな、みたいなものってありませんか?

イチロー氏:去年がそのいいチャンスだったんですよね。右中間にヒットで三塁まで行くのが一番きれいなんですよ。恐らく僕のプレーで。それはホームランでもないし、その足を生かした内野安打とかっていうのもあるけど、あれが一番きれいなはずなんですよ。それでしくじっちゃったから(二塁に到達した際もも裏を叩く)、あれもう一度やって三塁打にしたいというのは難しいけどね。三塁打を狙えないから、あれやりたいよね。やっぱりきれいに三塁まで走りたい。

Q.今年、イチローさんが51歳になる年に見に来てくれるこのお客さんたち、いろんなツー ルを通じて見てくれる人たちにこういうものを見せられたらいいなっていうものを言葉にしていただくとしたら、今年の試合はどんな想いを込めて戦うイメージ?

イチロー氏:よく今挑戦することって大事、挑戦というのはやっぱ自分の能力を少し超えたところに向かわないと挑戦とは言えないでしょう。能力以内でやっていることは挑戦と言わないよね。でも、この試合は僕たちにとって明らかに挑戦なんですよ。そういう意味でもうボロボロになるから体。これ大袈裟だけど、軽く命削ってやってるんですよ。でもピッチャーやるとどうしても必死になっちゃうんだけど、それを何かサラッと見せられたらいいなと思うのね。練習ではもう元気出して声を出して現役の時、高校時代もやってなかったようなことを今やるわけですけど。でも試合ではやっぱりサラッと綺麗にやりたいなって。そんな風に思ってます。

Q.女子の選手たちは3年戦った分の選手たちがいて、それぞれ次のステージで野球を続けている。今年出会うであろう高校3年生の女子の選手たちに対しては、この先も含めて野球に対してどんな思いを持っていてほしいとか、その彼女たちに対しての想いは?

イチロー氏:それはもう僕ら次第なんですよ。お願いしてそうなるわけじゃなくて、一緒に対戦、 真剣勝負して、彼女たちが何を感じるのかによるわけで。「僕はこういう気持ちで臨むからこんなことを感じてよ」というのはおかしなことなんですよね。だから、それを感じてもらえるような状態に僕はもう絶対しなきゃいけない。

Q.イチローさんからヒット打ったとか三球三振とったとかってその人たちからしたら一生の宝物だもんね。

イチロー氏:今やってることが正解だったかどうかっていうのは時間が経たないとわからないことだけど、でもよくこの3人を同じチームに。1度もWBCでも実現しなかったし、まさかこの3人が同じユニフォームを着る日が来るとはね。

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