30万人に1人が発症するという皮膚の難病「道化師様魚鱗癬」。生まれながらこの病と闘う5歳の息子を懸命に支える両親は、より多くの人たちに病気のことを知ってもらうため、息子との日常をブログで配信し始めました。励ましの声が多く集まる一方で「この世から消えろ」などの心無い中傷にも悩まされてきました。一家に密着取材しました。
■“産まれてすぐピエロと呼ばれた息子” 難病・道化師様魚鱗癬
三重県松阪市に住む濵口賀久(がく)くん(5)は、父・陽平さん(35)、母・結衣さん(35)の1人息子。

濵口結衣さん
「道化師様魚鱗癬っていうのを漢字で並んでいるのを見たときに、何だこれ…と。道化師…ピエロ…魚鱗で魚のウロコ…どういうことやろう」
賀久くんは、生まれてすぐに皮膚の難病=道化師様魚鱗癬と診断された。見た目が、ピエロが着る“道化服”に似ていて、全身の皮膚が魚のウロコのように剥がれ落ちることから、そう呼ばれている。
藤田医科大学 皮膚科学 杉浦一充教授
「魚鱗癬というのは生まれつきカサカサがある病気で、たくさんの種類があります。道化師様魚鱗癬は30万人に1人の発症。魚鱗癬の中でも一番重症」
この病気は、遺伝子に異常のある先天的疾患。仮死状態で生まれた賀久くんは全身の皮膚の異常、指の癒着、手足や耳の変形などが認められ、すぐに集中治療室へ移された。
難病を患う息子のために…母・結衣さんは、生後6か月の時からブログを書き続けている。

濵口結衣さん
「息子の病名である道化師様魚鱗癬っていう難病があまり知られていないので、知っていただく機会が増えればと始めました」
ブログのタイトルは「産まれてすぐピエロと呼ばれた息子」そこには出産した時の心境がこう記されている。
「あれは、、、なんだ?私は、何を産んだの?」
結衣さん
「親である私自身も初めて見た息子に対して驚いたのと、不安だったのと、大丈夫なのかな?という気持ちを抱いた。それを思うといまの賀久を周りの方が見た時にもそうやって思うのは当たり前のこと」
生後すぐ命を落とす場合もあるが、賀久くんは元気いっぱい。ただ、全身いたるところに現れる、皮膚のかゆみは大変な苦痛だ。保湿機能は、ほとんど失われていて、かくと皮膚が大量に剥がれ落ちる。感染症を防ぐためにも保湿剤を頻繁に塗る必要がある。

外出した時も、皮膚の保湿は欠かせない。風呂には朝と夜、2度入る。皮膚が傷ついていると痛みが伴うこともある。
結衣さん
「最初、(肌が)ぬれるときが一番しみるのか。『助けて』『やめて』と泣き叫ぶ時もあるので…。でも、きれいにしないわけにはいかない」
かゆみは寝ている間にも襲ってくるが、母・結衣さんが毎晩ケアしている。睡眠中には乾燥で目がしっかり閉じられなく、まぶたが裏返ることもある。
■治療法は確立されていない病。太陽の下での運動は20分が限界

藤田医科大学 皮膚科学 杉浦一充教授
「残念ながら、完全に治るという治療法は確立されていない。
症状に対して対処的な治療をするのが“治療”」
皮膚は次々と剥がれ落ちる。新たな皮膚を作るためにたくさんの栄養を取る必要がある。賀久くんが1日に必要なエネルギーは、成人男性の目安とされる約2400キロカロリーより多い。

結衣さん
「その日の皮膚の落ち方や調子によって、食べる量と飲む量も変わってくる。朝昼晩の3回のご飯では足りない」
2021年7月夕方、家族3人で近所の公園へ遊びに出かけた時のこと。帰り道、急に賀久くんの体調が悪くなった。賀久くんは汗が出にくく、体温調節が難しいため、太陽の下での運動は20分が限界だ。帰宅し、検温すると38.2℃だった。魚鱗癬患者が発熱しやすいことは、あまり知られていない。通常は20分程度、安静にしていれば、体温は下がるが、「コロナに感染したと疑われるのでは…」と両親は心配する。