派閥解消がもたらした異例の現象

自民党総裁選に立候補した顔ぶれを見ていくと一つの特徴がある。

例えば茂木幹事長と加藤勝信氏、林官房長官と上川外務大臣。この2つの組み合わせはどちらも「同じ派閥出身者」だ。茂木氏と加藤氏は茂木派の会長と幹部の間柄だ。林長官と上川大臣は旧岸田派(9月3日に正式に解散)に所属してともに岸田総理を支えてきた間柄だ。

同じ派閥(旧茂木派)だった茂木幹事長と加藤元官房長官
同じ派閥(旧岸田派)だった林官房長官と上川外務大臣

去年までの派閥が機能し、一定の存在感があった自民党であればこうした「同じ派閥から2人出馬意欲」というのはかなり禍根を残すことになっただろう。

また最初に名乗りを上げた“コバホーク”こと小林鷹之議員もこれまで二階派に所属していたが、今回の出馬に際して二階派が組織として推しているという形跡は感じることはない。

冒頭の自民党関係者も「派閥的なものはもちろんこれからも自民党には残っていくだろうが、これまでの様に派閥の親分が“この候補を応援しろ”というような締め付けができないから日和見の議員が多くなる」と予想する。

派閥の締め付けが本当になくなったかを確かめるため、筆者は安倍派に所属していたある議員に話を聞いた。この議員はこう答えた。

「派閥の先輩方は誰も指示してこない。というか『元気?』とも連絡してこない。むしろ他の陣営から『この人を頼む』『誰々をよろしく』という依頼はひっきりなし。今回の総裁選は、1回目は完全に自由投票だね」

どこの派閥に所属していたかはお構いなく、それぞれの陣営がこれまでの人脈を駆使して手当たり次第、支援を呼びかける。こうした活動もこれまでの自民党であれば支援要請を受けた議員が所属する派閥の幹部は「勝手にうちのムラを(ベテラン議員は派閥のことをムラと表現する)草刈り場にするな」と激怒したに違いない。