自民党だけの特殊な派閥政治
派閥というのは日本の政治の中でも自民党だけにある特殊な形態だったと思う。
かつて2009年から12年までの3年3ヶ月政権を担った民主党やいまの立憲民主党にも「グループ」と呼ばれる集団はあるが、派閥と決定的に異なる点がある。それは「グループは掛け持ちすることが可能だが派閥は掛け持ちを許されない」ということだ。
テレビニュースで自民党の各派閥の総会の様子をご覧になった読者もたくさんいると思う。実は、ほとんどの派閥はあの総会を通例、木曜日の昼に行っている。つまりほぼ同時刻にそれぞれの派閥が銘々会合を開いているということだ。この大きな理由は派閥のメンバーに掛け持ちを許さないという派閥の強い意志の表れと言ってもいい。
少し話が脱線してしまうが、派閥総会の際には出席した議員に弁当が配られる。ニュース映像でも口をモグモグと弁当を食べながら派閥幹部の話を聞いている議員の様子を記憶の方もいらっしゃると思うが、あれも「同じ釜のメシ」を食って一体感を強める狙いがあるものと筆者は想像している。

確かに民主党は複数のグループを掛け持ちしている議員が多数いた。グループを「情報交換と政策勉強の場」と割り切っていたのだろう。こうしたグループの体質もあり、当時の民主党は議員個人が自由な発言・主張をする雰囲気が強かった。
しかし、逆風に襲われた時にはグリップを利かせるのが困難という弱点も併せ持っていた。このため2011年の東日本大震災の発災以降、混乱に次ぐ混乱を生じさせ、野党転落の憂き目を味わうこととなった。
一方、自民党の派閥政治もいよいよ機能不全に陥った。派閥の裏金事件にとどまらず、秘書給与の詐取事件、公職選挙法違反と「政治とカネ」の問題がこれでもかと噴出している。
これは「政治にはカネが必要」という自民党の多くの議員が抱いてきた固定観念が社会の大勢の感覚と極端にずれを生じたことの表れだろう。