アルビノのミュージシャン「特別な力なんてウソ」

夕暮れ時のルンダジのバスターミナルで、高い天井にビートの効いたアフロ・エレクトロ音楽がガンガンに反響している。壁に即席のスクリーンが設置され、黒いキャップを被ったアルビノの男性がラップトップを操作している。

ジョン・チティ。多くのヒット曲を持つミュージシャンだ。シルキーな歌声を活かしたラブソングの一方で、メッセージソングも歌ってきた。「Ni Colour Chabe」(肌の色だけ)という曲のMVには、アルビノの子供たちがたくさん出演、その脇でジョンが歌う。

“君ができることなら僕にだってできる”
“君がなれるものなら僕もなれる”
“肌の色だけじゃないか”

同じくアルビノであるジャマイカの有名ミュージシャン、イエローマンらとアルビノ襲撃事件を非難する「Stop Killing Us」という曲を発表したこともある。襲撃事件があれば現場に足を運び、調査もしてきた。

バスターミナルではアルビノ襲撃がいかに間違っているかを訴えるビデオの上映に続いて、ジョンが集まった50人ほどの聴衆に対話を仕掛けていた。

「ビデオを見て何を思ったか、知り合いにアルビノはいるか、言いたいことがある人は手を挙げて!」

聴衆もマイクを回しながら発言する。

「アルビノの体に特別な力があるなんて嘘だ」
「(アルビノの体を使った品物のおかげで)金持ちになったと言う人は、別の理由で金持ちになったんでしょうよ」
「政府はいったい何をしているのか」

対話が一通り終わったところでジョンが一曲歌い、啓発イベントはお開きとなった。ジョンによれば聴衆の中から迷信を肯定するような声も飛んできたというが、概ね反応は良かったそうだ。

バスターミナルや市場など公の場所でイベントを開くのは、襲撃に雇われるのがこうした場所に集まる極めて「フツーの人たち」だからだが、一方で元凶はアルビノの体を「オーダーする」金持ちなのだとジョンは言う。