襲撃犯の会話「右腕じゃないとダメだ」
襲撃されたのは2017年の11月のこと。数日前から予兆はあった。夜、同じ地区に住んでいる男たち3人が訪ねてきたのだ。
ミリアムは男たちに家の外に呼び出されたが、話し声を聞いた父親も外に出てきて男たちを問い詰めた。
ミリアムの父
「何の用だ」
男の一人
「タバコの火を借りたいんだ」
ミリアムの父
「タバコの火を借りにここまで来たのか?あんた、いつからタバコ吸うようになったんだ?」
男の一人
「いや、友達が…」
いかにも怪しい。父親は「何か起きたらお前らを犯人と見做す」と警告、男たちは引きあげた。
翌日、男たちは戻ってきた。またミリアムを呼び出し、一人が100クワチャ(当時のレートで950円)の現金を出して、「これで俺とヤれ」と言った。ミリアムは「何であんたみたいなオジサンと」とはねつけ、男たちは再び退散した。
さらにその翌日も男たちはしつこくやってきたが、今度は母親のビューティーに追い払われた。
そして、その次の夜。ミリアムが寝床に入っていると、またもや男らがドアをノックして「ミリアム、外に出てきて」と言う。
これで4日目だ。「こんな夜更けになんで外に出ないといけないのか」と難色を示したミリアムだったが、急に眠気を覚え、気が遠くなるのを感じた。
何かしらの薬物が使われたのだろうか。朦朧とする意識の中、布が口に突っ込まれた。目隠しはされなかった。
一人に上半身を抱えられ、もう一人に足のほうを持たれ、道まで運ばれ、地面に横たえられた。そこにはもう二人、男がいたという。そのうちの一人が刃物でミリアムの左腕を切断しはじめた。
すると別の男が「違う、右腕じゃないとダメなんだ」と言った。そして、ミリアムの右腕が切り落とされた。ミリアムは一生、隻腕になった。
男たちは切断した右腕を、持ってきていた薪の中に隠すと、ミリアムの頭や背中を刃物で何度も殴りつけ、去って行った。
暗闇の中でミリアムが痛みで泣き叫んでいると、近所の人たちが集まってきた。両親も起きてきた。取り乱す母親。父親は必死にミリアムを病院まで運んだ。
その後、実行犯4人は逮捕された。一人は教師だった。
顔を見られているのに、逃げられると思ったんでしょうか?そう問うと、「ミリアムが死んだと思ったんだろう」おじのイドンは吐き捨てるようにそう言った。

もう一人、逮捕された人物がいる。隣国マラウイのウィッチドクター=呪術医だ。
アルビノ襲撃には、伝統療法を行う呪術医が絡んでいることが多い。
捜査当局の調べでは、切断されたミリアムの右腕は、国境を越えてマラウイに持ち込まれ、そこで骨と肉に分けられ、この呪術医に持ち込まれた。
肉の部分は溶かされ、ローションのように加工されて売られたのだという。骨は証拠として警察に押収された。
実行犯に話を聞きたいと思って刑務所での面会を画策したが、実現しなかった。
