「また来るからね」亡き妻との別れ ウクライナで妻子に祈り

ひ孫のエミリアちゃんと降籏さんの初対面 ウクライナ・ジトーミル

降籏さんは2023年6月、妻と一人息子に別れを告げるため、ウクライナに向かった。車窓からの懐かしい街並みに目を細め、スマートフォンで何度も撮影する。爆撃された建物の瓦礫が目に入ると「心が痛む」と呟いた。

妻リュドミラさんの墓石 右隣が降籏さんの墓石

日本で永住帰国を決めた降籏さんには、ウクライナで心残りにしていることがあった。それは2021年に亡くなった一人息子のビクトルさんの墓石を注文することである。降籏さんはウクライナで所持していた車の売却金などを購入資金に充て、果たせなかった墓石の注文を終えることができた。

「いつも私を心配してくれる心の優しい息子でした。50歳で亡くなったことは本当に残念です」

そして、もう1つの心残りは妻リュドミラさんに別れを告げることだ。妻の肖像画が刻まれた墓石の横には、すでに降籏さんの肖像画入りの墓石がある。降籏さんは白い花を供え、祈りを捧げた。

「今回はちゃんと別れを告げ、私のことも心配しないように話しました。天国で安らかに眠るよう伝えることができたので、心が落ち着きました。『しばらく来られなくなるけど、また来るからね』とも」