「いつまで経っても反対で変わらない」幻の”多数決”案
久々に岸田総理から憲法改正に向けた強いメッセージが出されたのは2024年1月、通常国会冒頭での施政方針演説だ。

●岸田総理(1月30日・施政方針演説にて)
「あえて自民党総裁として申し上げれば、自分の総裁任期中に改正を実現したいとの思いに変わりはなく、議論を前進させるべく、最大限努力したいと考えています」
「今年は、条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速してまいります」
内閣の基本方針や政策について訴える施政方針演説で、総理大臣ではなく、わざわざ自民党総裁として強い言葉で憲法改正に言及した。
岸田総理が施政方針演説、所信表明演説で「自民党総裁として」という表現を使ったのは初めてだった。
同じ時期に岸田総理は、2024年は一部の野党の反対を押し切ってでも憲法改正を実現したいとの強い思いを周囲に語っている。

●岸田総理 (2024年1月 周囲に対し)
「国民投票があるから、ということでこれまでは護送船団でやってきたけど、いつまで経っても反対で変わらない党もある。予算が通ったあと、どこかのタイミングで多数決で一気に決めないと動かない」
ただ、通常国会では、裏金事件を受けた政治資金規正法の改正の議論が終盤までずれ込んだ。岸田政権は法改正を無事に行うことを優先し、憲法改正の議論で野党を切り捨てることは避けた。また、自民党内でも衆院と参院の間で「緊急事態条項」をめぐって認識の違いが表面化していた。結果として通常国会でも憲法改正に向けた発議は行われず、岸田総理が掲げていた「自身の任期中の憲法改正」は事実上不可能となった。

国会終了後、憲法改正はどうするのか政府関係者が尋ねたところ、岸田総理はこう語ったという。
●岸田総理(8月 政府関係者に対し)
「(国会の)憲法審査会の動きをいつまでも待っているわけにはいかない。そこは次の仕掛けを考えていかないといけない」