総裁選でも問われる「自衛隊の明記」

そうした経緯があっての今回の「国民投票の際は自衛隊の明記も」という発言だが、9月に自民党総裁選を控えたタイミングだっただけに、「保守陣営を取り込むための総裁選対策だ」などの冷ややかな声は自民党内からも出ている。
また、ある「ポスト岸田」候補は「全く新しいことは言っていない。 9条に自衛隊明記なんて、自民党員ならみんな思ってることだから」と切り捨てた。

ただ、長年憲法改正の議論に携わってきた自民党関係者は、岸田総理の発言を手放しで歓迎するとともに、こう指摘した。

●自民党関係者
「総理が公式に『国民投票にかけるのは自衛隊の明記が最初』って表明したから、この方針はもう覆せないだろう。石破さんも小泉さんも、他の誰かも、『最初に自衛隊の明記をやらない』という選択肢は消えた」

岸田総理が憲法改正についてカードを切ったことで、他の「ポスト岸田」候補も総裁選で「自衛隊の明記」を前提とした議論を行わざるを得ないという見方だ。

総裁選での論争テーマに憲法改正が浮上する一方で、8月のJNN世論調査で「次の総理にもっとも重点的に取り組んで欲しい政策」をひとつだけ聞いたところ、1位は「物価高対策」で20.9%、「憲法改正」は1.9%で最下位だった。
自民党内と国民の関心が乖離したまま、憲法改正議論は次のステージに入ろうとしている。

TBSテレビ 政治部 官邸キャップ 川西全