◆被告は大手製紙会社の支社長やホテル社長を歴任
北海道東部の弟子屈町で生まれた上牧被告は、北海道大学農学部を卒業後、大手製紙会社に入社し、60歳で定年退職するまで札幌支社長などを務めました。
妻の英代さんとは、1958年に結婚。
翌年には長男、結婚から4年後には長女が誕生しました。
64歳で製紙会社の系列ホテルの社長を退任してからは、年金生活に入り、2016年から自宅で英代さんと2人で暮していました。
英代さんが2019年に軽度の認知症と診断されてからは、平日は訪問介護やデイサービスなどを利用し、上牧被告も食事の世話などの介護を行っていました。
証言台に立った長男は、2人について「円満で仲の良い夫婦だったと思っている」と証言していました。
◆妻の介護をする一方、被告自身の体調も不安に「2人で冬を越すのは難しい」
検察によりますと、事件のきっかけになったのは去年10月26日。
上牧被告自身がめまいやふらつきなどの症状で病院を受診したことでした。
この時、英代さんの認知症は進行し、去年の夏ごろには要介護度2の認定を受け、上牧被告の介護の負担は増えていました。

上牧被告のめまいやふらつきは、介護疲れによって発症したうつ病の症状でしたが、受診した消化器内科では「異常なし」という診断でした。
症状は、老衰の表れだと考えた上牧被告。
「治る見込みはなく、どんどん悪くなる」と考え、英代さんを施設に入れることを考えました。
しかし、当時の収入は月27万円の年金のみ、預金も少なく、月14~15万円かかる施設への入所は諦めました。
自身の体調悪化から妻の介護を続けることができず、施設に預ける金銭的余裕もないと悲観した上牧被告は「2人で冬を越すのは難しい。
いっそ家内を私の道連れにして楽になろう」と心中を決意。
そして長男と長女に向けて遺書を書きました。