「子どもが何でできないのかな」意を決して、妻に“秘密”を打ち明けた

北さんは20代後半で結婚したものの、妻には、自分が子どもを作れない体だと打ち明けることはできませんでした。養子を迎え入れようと、持ちかけたこともあったといいます。

(北三郎さん)
「ポツンと私に言いましたよ。『子どもが何でできないのかな』って」
「(養子の候補を)どの子がいい?と女房に写真を見せたんだけれども、『あなたの子どもでないとダメだ』と言われた時には断念しましたよ」

妻が白血病に倒れて亡くなる直前、北さんは、意を決して “秘密” を打ち明けました。

(北三郎さん)
「『産婦人科に連れていかれて、パイプカットをやられた』と。『そのために子どもができなかったので、本当に申し訳なかった』と言いましたよ」

――本当の事を言った時、奥さんはどんな反応だったんですか?

「うつむいて、しばらくは黙っていて、『ご飯だけはちゃんと食べてね』と言って、まもなく(2、3日後に)息を引き取った」

夫の嘘を責めることはなかった妻。最期の会話でした。

6年前(2018年)に仙台での裁判の報道を見て、ようやく自分が受けたのは優生手術だと認識し、訴えを起こした北さん。国の責任を認める判決を勝ち取り、人生のひとつの区切りにしたいと願ってきました。