「日本の社会に解けこもうとしている人たちに水をかける法律があってはいけない」

平日もにぎわう横浜中華街

6月半ば、平日の午後も観光客や修学旅行生でにぎわう中華街に、曽さんを訪ねた。

「不安です。世界の政治情勢が不安定な中で、一番、被害を生じるのが立場的に弱い人たち。それを容認するような法律が作られるのは怖い

曽さんは、国会で意見を述べた日と同じように静かに語った。

「私が生まれた時、日本と中国は戦争をしていた。それでも生き残れた。なぜか。隣近所で一緒に生活をしていると、助け合う社会ができるから」 
「これからは国際的に相互乗り入れが増えてくる。異質な者を受け入れる、寛容であるという心情を持たなければ。多文化共生、多民族共生を口で言うのは簡単だが、お互いに努力しないとできない。中華街は、共生の成功例だろう。今回のように、日本の社会に解けこもうとしている人たちに水をかけるような法律があってはいけない


国連の人種差別撤廃委員会は日本政府に対し、6月25日付で「入管法改定が永住資格を持つ人の人権に及ぼし得る影響を懸念する」とした書簡を送り、8月2日までに見直しや廃止も含めて人権を確保するための措置について回答するよう求めた。

いったん成立した法の文言は、新たな立法措置によって廃止されない以上、ずっと生き続ける。どんな国会答弁があろうと、付帯決議で「特に慎重な運用に努める」と明記しようと、裁量権が運用する側にある限り、いつでも法が牙をむく余地は残る。

今回の法改定が当事者にもたらした不安が消えることはない。