「不当に重い不利益を課すこと」は差別になる恐れが…
国際人権法が専門の阿部浩己明治学院大教授に話を聞いた。
「日本国民が税金を納めなければ、督促状や口座の差し押さえという措置がとられるが、日本の国と強い結びつきのある永住者の場合も同じ対応で足りるはず。永住資格の取り消しにまで至れば、国籍がないことを理由に不当に重い不利益を課すことになる。そうなると、日本も批准している『自由権規約』という国際条約が規定する差別の禁止に抵触する恐れが大いにある」
さらに「『自由権規約』には、私生活への恣意的な干渉を禁止する規定があるが、永住者は日本の社会に定着しており、守らなければならない生活上の利益はとても大きい」と指摘。そのうえで、「恣意的であるかどうかは、永住資格を脅かしてでも守らなければならない国の具体的利益がどれだけあるかに関わる。在留カードの不携帯や軽微な犯罪程度で永住資格が取り消しとなれば、私生活への過度の干渉になり、この規定にも違反することになるのではないか」と述べた。

多くの疑問が解消されない中、華僑団体のほか、在日韓国人の「在日本大韓民国民団」、弁護士会、日本ペンクラブなどが反対や疑問の声を上げた。
国会審議で政府は「永住許可の取り消しは、許可後に要件を満たさなくなった一部の悪質な場合」と繰り返し、「うっかり在留カードの携帯を忘れたり、病気や失業で経済状態が悪化して税金が払えなかったりした場合は対象にしない」と答えざるを得なかった。
また、施行までに取り消しが想定される具体的な事例をガイドラインで示すとした。
であるならば、本来は、それを法律ではっきりと規定するべきだと思うが、参議院も与党などの賛成多数で改定案は可決、成立した。付帯決議には「すでに定住している永住者の利益を不当に侵害することのないよう…特に慎重な運用に努めること」などの文言が加えられた。