「原発事故で学んだ。だからそれを伝えたい」

夕食のあと、小林さんが学生たちに伝えたのは、これからも小高で生きていくことについて抱いている葛藤でした。

小林さん「全部なくなった町と、続いている町の温度差が同じ市の中にあるから、本当はこっち(小高)を引き上げてゼロのスタートラインをつけてくれたら良いが、そこまでの思いに至らない状況が今あるのかなって」

学生「小林さんが考える小高の復興のゴールがどこにあるか、気になる」

小林さん「復興というのは人それぞれ違うと思うけれど、私としては8割(進んでいる)。自分の事業としてここ(旅館)が成り立っていることが一番かなと思っています」

東北大学 公共政策大学院・阿部颯さん「人によって感じている課題も違うと小林さんの話を聞いて感じた。どの課題が優先的に取り組むべきものなのか、しっかり考えていかなければならないと思った」

東北大学 公共政策大学院・ハン・ジェホさん「行政と実際に地域に住んでいる人で意見の食い違いがあるかなと認識した」

震災と原発事故について伝える際、小林さんが意識しているのは、正直な言葉で思いを伝えること。若者たちには、自分で考え抜く力を養ってほしいからだといいます。

小林さん「こうだったとは話すけれど、こうだという答えはない。あとは自分で考える力を蓄えたり、学んでいったりした方が良い。自分もこの原発事故で学んだ。いっぱい学んだ。だからそれを伝えたい」

震災と原発事故の記憶がない世代が多くなり、その風化が懸念される今。小林さんは、未来を切り拓くヒントを掴んでほしいと願いながら、震災の記憶と教訓を伝え続けています。