仮設住宅が完成したこともあり、町には少し人が戻ってきました。

災害ごみを出している家も増えましたが、町野町は応急危険度判定で「赤」と判定されている家屋が多く、ほとんど自分たちだけで片付けを進めている状況です。

辛うじて立ち入りができるお家でも、ボランティアさんに片付け支援をお願いすると、家財を確認しつつ行うため、全ての家財を出すことになることから、支援を諦めているご家庭もあります。

被災した家屋は、余震やこれまでの雪、雨の影響もあり、中で作業をしているとミシミシいう音が聞こえてくるそうです。

そのような家の中で、被災者自身が、ヘルメット、安全靴や手袋といった充分な装備もなく、片付けをしなければならない状況は二次被害にもつながる危険性があり、非常に心配しております。

自宅避難を続けていた方の話では、夜、静かなところにどこからか凄まじい音が聞こえてくるときがあるそうです。「何の音だろう」と外に出てみても、街灯もなく真っ暗なので何も見えません。朝になって改めて見てみると、きのうまで建っていた家が倒壊していたそうです。

こうした新たに倒壊する家屋の話は、町野町だけでなく、奥能登地区の至るところで聞かれます。そうならないうちに、あるいはそうなってしまった後も、家財などを救出したくても、被災者だけで進めるには、保管場所の問題なども含めて、多くの方が困っていらっしゃいます。

2007年の能登半島地震とは異なり、大型連休に子どもや孫などの親族が、連泊で実家の片付けに来られない状況です。それは、奥能登地区には宿泊場所が限られており、その多くが休業したままだからです。

同じ要因が、二次避難者が地元に戻れずにいる状況を作り出しているように感じられます。家を片付けたくても、避難所などに泊まることもできず、日帰りでしか作業することができないのです。

また、公費解体の申し込みも難航しています。曽祖父の時代から名義変更などの書き換えがなされておらず、先祖代々の家屋に住み続けている人が多くいることが浮き彫りになっています。