共生の道を探る シカの食害から森を守る画期的な方法

――シカによる被害がどういったものか教えていただけますか

林野庁 小林正典さん
「シカがいない場所というのは、非常に緑が豊かな状態で、木も下草も結構生えている状況です。シカが増えてしまうと、木の下の下層植生(下草)がほとんどなくなってしまう。もう全部食べれるものは食べてしまう、というような」

シカによる森林被害の面積は年間3300ヘクタール、皇居の約30倍の広さです。こうした被害は、林業関係者を困らせるだけではありません。

森には洪水や土砂崩れを防ぐ、二酸化炭素を吸収して地球温暖化を抑制するなど、重要な役割があります。森が荒れることは、私達の生活環境を脅かすことにも通じるのです。

小林正典さん
「公益的な機能が非常に大きいですから、やはりそういうところを守るためにも、シカの対策というのは非常に重要だと考えています」

これまでシカの捕獲を担ってきたのは猟師たちです。しかし、全国的に猟師の高齢化が進んでいて、その6割は60歳以上です。

猟師
「ここはね、猟友会じゃないの、老友会。若い人が入ってこない」

他にも罠を使った捕獲法がありますが、慎重かつ俊敏なシカの捕獲は簡単ではありません。そこで小林さんは、くくり罠を使った画期的な方法を考案しました。その名も「小林式誘引捕獲法」です。

小林正典さん
「ワイヤーの輪っかを踏み板にかけて、シカが踏む場所を特定して、そこに設置をするんです。罠の周りに石を並べます。シカというのは石とか、そういう障害物を嫌がります。なおかつ(石の)外周に餌をまく。実はシカというのは餌を食べるときに、口元の横に前足を置く習性があるり、餌を食べるときに踏むという理屈です」

シカが罠にかかるとワイヤーが踏み板から外れ、シカの足を捉えます。

小林正典さん
「従来は獣道にかけないといけなかったのが、実はどこにかけても捕れるというのがわかりまして、初心者の方でも非常に簡単に効率よくシカを捕ることができると」

もちろん「シカを捕獲するのはかわいそう」という声もあります。

小林正典さん
「どうしてもシカというとかわいい存在、動物園のシカを想像しますが、田舎に行くと本当に被害が深刻ですので、皆さん口を揃えて『何とか対策をしてほしい』と言われます」