初めて会ったのに 「私に似合うカクテルをお願い」 無茶なお願いのキーワードは“暖色系”

「あちらのお客様から…」と同様に、バーに訪れた女性がバーテンダーさんに「私に似合うカクテルをお願い」という場面をドラマで見たことがある。実際、こんな無茶なお願いをされたら、バーテンダーさんはどう対応するのだろう。

竹田さん
「冗談でおっしゃる方はいます。でも初めてのお客様から、そのようなお願いをされると、好みがわからないので難しいですね。その場合は、普段飲まれているお酒を伺って、基本的に暖色系の色のお酒を作ります。もし尋ねられても『華やかな方なので!』『明るい方なので!』と言えますからね」

誰も傷つけない、優しいやり取りだ。竹田さんによると『バーテンダー』とは諸説あるものの、「バー(bar)+テンダー(優しい人)」という意味があるという。その言葉を表すかのように、竹田さんは接客をしながらお客様の情報をキャッチし、優しく応対していくのだ。

一方、常連になると、「今日はこんな感じのお酒が飲みたいのではないか」とイメージができるそうなので、晴れて常連になったあかつきには「私のイメージで作ってくださらない?」と冗談めかして言ってみるのもいいかもしれない。では常連って、何回、お店を訪れると認めてくれるのだろう。

竹田さん
「私が考える常連さんとは、この人の人生を見ていきたい、そして(その人の)人生の最後には棺桶にお酒を入れたいなと思う人です。

バーとは、お客様と個人対個人で長くお付き合いをすることだと思っています。しかし、転職や転勤、また結婚や子どもが生まれたなど、人生には色々な転機がありますよね。

その転機によってバーで過ごしていただく機会に波があることもありますが、私たちはその波の中でお付き合いをさせてもらうんです。久しぶりにご来店いただいたときは、とても嬉しくなりますね。バーを長く続ける意味はそこにあると思います。長く続けなくてはいけませんね」

取材を終え帰路に向かう途中、またここで夜を過ごしたいなと思った。『近くに行きつけのbarがあるけど、1杯どう?』なんて言える日が来るときのために最低限のマナーだけは身につけておこう。