精子提供者『少子化という時代の流れとして仕方のないこと』

見知らぬ人同士がネットの世界でつながり行われる『遺伝子の取引』。SNS上には精子提供を申し出るアカウントが無数に存在する。
【SNS上で精子提供を行うアカウントの書き込み】
「35人誕生、A型二重、179cm」
「一流大学、超一流企業、ルックス偏差値60」
学歴・容姿・年収などをことさらに強調する書き込みが多い。これらの行為は違法ではないというがあまりにも無秩序な状態にみえる。
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複数のアカウントに接触を図ると、匿名を条件に「直接会って取材に応じる」という男性が現れた。
(Tさん)
「初めまして、よろしくお願い致します。(Q精子提供をされている方?)はい、そうです。今日は提供の予定が1件ございまして」
羽田空港で働くTさん(30代)。1年半ほど前からマッチングサイトを通じて精子を無償提供しているという。
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(記者)「今まで何人くらいに精子提供をしてきた?」
(Tさん)「今までだと4組の方ですね。計13回提供してきました」
(記者)「実際にそれが妊娠や出産に繋がったケースというのは?」
(Tさん)「1件だけです。昨年の4月に提供した方で、昨年の12月に無事に赤ちゃんが誕生しました」
(記者)「(赤ちゃんの)写真は見た?」
(Tさん)「いや、見ていないです。名前だけ教えていただきました。娘がかわいくて仕方がないですね、私としては。まあ見たこともないですけど」
(記者)「見たこともない会ったこともない子どもをかわいいと思える?」
(Tさん)「親馬鹿っていうか自分の子どもでは実際にはないんですけれども」
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1時間後、車は目的地に到着した。郊外にあるショッピングモール。この場所で精子の受け渡しをするという。
(Tさん)「私から相手の方に深入りはしないので、相手の方の名前も知らないですし」
(記者)「え?相手の方の名前も知らないんですか?」
(Tさん)「はい、そうです。知らない人の方が多いですね。名前や個人情報がわからなくても抵抗はないですね」
提供相手は“関東在住の夫婦”。夫側の精子に何らかの問題があるといい、この日が4回目の提供だ。
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(Tさん)「今から行きます」
被提供者との信頼関係に差し障るとして、ここから先の撮影はしないよう求めてきた。相手から専用の容器を受け取って、多目的トイレで精子を採取し、それを紙袋に包んで受け渡すのだという。
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待つこと20分。
(記者)「あ、来た。戻ってきました」
(Tさん)「終わりました」
(記者)「どんなやり取りをされたんですか?」
(Tさん)「特に何もなく」
(記者)「命のやりとりがこれほどカジュアルに気軽に行われていいのかということは?」
(Tさん)「やりとり自体はカジュアルでも、その中から奇跡的な確率で生まれてきて人間が誕生するわけですから、それ自身は特に間違ったことだとは思いません。この少子化の中ですから、時代の流れとしてそれも仕方のないことではないでしょうか」














