食料不足深刻化で…急増する凶悪犯罪

海を挟んで北朝鮮に接する江華島(カンファ島)。

海岸線には延々と鉄条網が続きます。

日下部キャスター
「北朝鮮を一望できる展望台に来ています。対岸に広がっているのは、キムさん一家が住んでいた黄海南道です」

望遠レンズを使うと対岸の様子がうかがえます。

農作業に従事する人。自転車で移動する人。監視塔らしき建物もあります。

コロナ以降、扉を閉ざした北朝鮮内部で一体何が起きていたのでしょうか。

2020年1月以来、北朝鮮はコロナ感染対策を理由に、厳格な出入国制限を行い、人と物の行き来が止まった。

韓国に渡る脱北者の数にも明確に表れている。

韓国統一省によると、多い時には年に2000人を超えたが、この4年間で激減している。

徹底的な統制によって北朝鮮は、「苦難の行軍」と呼ばれる1990年代の大飢饉以来の食料不足に陥っていたのだ。

脱北者 キムさん(30代)
「苦難の行軍の時期より厳しかったです。その時でも、穀倉地帯の黄海南道では、飢え死にしませんでした。

しかし、コロナの間は毎日のように、町内の誰々の父親が死んだ、誰々の子供が死んだらしい。そんな話が聞かれるほど沢山の人が死にました」

食料不足が深刻化するとともに、凶悪犯罪が急増したと言う。

キムさん
「生きてゆくために凶悪犯罪が増えました。殺人や強盗が日常茶飯事でした。公開処刑も沢山ありました」

日下部キャスター
「公開処刑を見に行きましたか?」

キムさん
「見ました。2023年4月中旬ですが、大学生が中年女性を殺して、480万ウォンを盗んで逃げたんです」

日本円で8万円ほど。

エリートであるはずの大学生が金目的で犯罪を犯し、処刑された。

手錠をかけられた若者たち。

北朝鮮は、韓国文化の流入にさらに神経をとがらせている。

これは韓国のシンクタンクが入手した公開裁判の映像。

映像によると、2人の少年が韓国の映画やテレビ番組を視聴・配布したとして、懲役12年の刑が言い渡された。

傍聴席には見せしめのためか、被告と同年代とみられる若者たちが座る。

皆マスクを着けていることから、コロナ流行時の映像とみられる。

キムさん
「2022年7月26日のことです。22歳の人でしたが、韓国の音楽や映画を友人と見たとして銃殺されました。処刑を前の方で見たのではっきり記憶しています」

キムさんはそれまで淡々とインタビューに応じていました。

ところが、質問が家族におよぶと感情を露わにしました。

キムさん
「そんな話もさせるんですか。家族はインタビューに反対しているのに、私は応じているのですよ」

さらに政治の話題になると…

日下部キャスター
「コロナの金正恩政権をどう評価しますか?」

キムさん
「わかりません。政治的な発言は出来ません。悪いけど。最高指導者がすることに、ああだ、こうだ、と言えますか」