「お前が悪いんじゃ」失敗したら「組織」の人間に笑われる
「何をしに来た、帰れ!」
最初に凶刃に掛かったのは、追い返そうとして声を上げた、岩田健一さんの父親の友義さんだった。包丁が突き立てられる。しかしうまく刺さらなかった。その理由について「包丁がペラペラの安物だったため」と河野被告は説明している。
「警察を呼べ!」
傷を負った友義さんは大声を上げる。その声を背中に、河野被告は車へと引き返した。

「もう、このままどこかへ行こうかと思ったが…。『組織』の人間に笑われてしまうと思った。今のままでも殺人未遂になるのだという思いもあった」
河野被告は、別に用意してあった刃渡り12.7センチの丈夫なナイフに持ち替えると、再び健一さんの家へ向かった。
「帰れ!」
なおも追い返そうと声を上げる友義さんに、持ち替えたナイフを5、6回突き立てた。友義さんは、壁に向かうようにして、うずくまった。
それを見届けた河野被告は、家の中へ歩みを進める。母親のアイ子さんの姿が見えた。一瞬ためらったものの、2回ほど刺した。
「1人殺すのも3人殺すのも、同じという思いだった」
傷を負ったアイ子さんは、助けを求めて逃げ出した。河野被告は、さらに家の奥へと廊下を進む。健一さんの姿が目に入った。
「お前が悪いんじゃ」
5、6回刺した上で、首も切りつけた。
「絶対こいつだけは生かしておけないと思った」
家の前にパトカーが到着する。玄関先で大声を上げて助けを求めていたアイ子さんが、再び家の中へ戻ってくる様子が見えた。
「1人だけ生き残っても地獄だと考えたんでしょうね。母親への恨みは無かったが…」
アイ子さんに対して再びナイフを数回突き刺した。アイ子さんの体が崩れ落ちた。
「刃物を置け!撃つぞ!」
警察官が拳銃を構え、家の中に駆け込んで来た。
「自分の首を突こう(自殺しよう)と思ったが、裁判で、世の中に対して電磁波攻撃の被害について明らかにしようと考え、思い留まった」