「刃物を捨てろ、撃つぞ!」流されたパトカーのドラレコ映像には…

一番に現場に駆け付け、河野被告の身柄の確保に当たった警察官2人も証言台に立った。1人は現職の警察官、もう1人は事件後に退職していた。

確保された時の河野被告の様子について、素直に指示に従うなど「抵抗する様子は無かった」といった内容の証言をした。

これに先立ち法廷では、パトカーに搭載されていたドライブレコーダーの映像も、証拠として大型モニターに流された。

「河野なる男性が、包丁を持って押し掛けて、今は立ち去った」
「男性がけがをした模様」

緊急走行するパトカーの車内に、警察無線の音声が流れる。

住宅地の狭い路地を行くパトカーは、やがて減速する。右手前方の住宅の前で、殺害された母親のアイ子さんと思われる人物が、パトカーに向かって手を振っているような仕草が見える。

警察官2人を乗せたパトカーは、岩田健一さんの自宅前に停車する。ドライブレコーダーのカメラは前方を映し出していて現場を映してはいないが、警察官の1人がパトカーのドアを開け、降りていくような音が聞こえる。

「けん銃、けん銃」

緊迫した現場の空気が、モニター越しにも伝わってきた。残されたもう1人の警察官が、本部と無線で通信している。

「至急、至急…」

その後ろでは、車外の音声も録音されていた。再び河野被告に襲われたアイ子さんの声だろうか、悲痛な声が聞こえてくる。

「痛い!痛い!」

その直後、警察官と思われる声が聞こえた。

「刃物を捨てろ、撃つぞ!」

後の司法解剖で、殺害された3人の身体からは、いずれも10カ所以上の刺し傷などが確認された。死因は全員、失血死だった。