党内に充満する不満

今回の裏金事件を巡り、検察は世耕前参院幹事長ら安倍派幹部に対しては、「不起訴(嫌疑なし)」としている。にもかかわらず、世論におされる形で離党勧告などの厳しい処分を科すことは法治国家としての課題も残るように思われる。

ただ、安倍派幹部は収支報告書への不記載などをめぐり「知らない」「承知していない」などと繰り返すばかりで、自ら実態解明をおこなう姿勢も見せず、政治不信や党の信頼を損ねてきたことも事実だ。今後は検察審査会でも安倍派幹部らの責任は問われることになる。

党内の処分をめぐっては「基準が曖昧で場当たり的だ」「捜査能力のない人達で決めた人権侵害だ」などと不満も充満している。
何より、党の責任者である岸田総理が処分対象となっていないことに対し党の重鎮からも「岸田総理にも党のトップとしての責任はある。処分がされなければ火を噴く」などと、責任を問う声が上がっている。

政治資金パーティーのキックバックがいつから始まり、安倍派ではどのようにして復活したのかなど、実態が明らかにならないまま処分だけが決まることを疑問視する声もある。

党執行部からは、処分をおこない、幕引きを図りたいとの思惑も透けて見えるが、実態解明が進まない限りは世論の納得は得られず、野党の国会での追及も収まることはないだろう。

最新のJNNの世論調査では、次の衆議院選挙で「政権交代をのぞむ」が42%と、「自公政権の継続をのぞむ」の32%を大きく上回った。
“裏金事件の実態解明に努め、政治と自民党の信頼回復をすることが出来なければ、国民の審判が下る日がくる”
そうした危機感を持つことが出来るのかに、自民党の再起はかかっている。

TBSテレビ政治部 与党担当キャップ
中島哲平