(ブルームバーグ):世界最大級のヘッジファンド、米ブリッジウォーター・アソシエーツのグレッグ・ジェンセン共同最高投資責任者(CIO)は11日、AIブームがもたらすリスクとその影響について厳しい警告を発した。
ジェンセン氏はブルームバーグのポッドキャスト「Odd Lots」に出演し、「残念ながら、これは2020年2月の状況と同じだ」と述べ、AIを新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)初期になぞらえた。
「歴史が示唆するところでは、AIが人を殺し始めるまでわれわれは何もしないだろう。しかし、われわれはそうした事態に直面することになる。それは起きる。そうなる前に対処を始めた方がはるかにいい」と語った。

ジェンセン氏は決してテクノロジーを嫌っているわけではない。OpenAIとアンソロピックの初期投資家で、ブリッジウォーターでの30年間にわたり、人間の意思決定や執行の再現を目指すアルゴリズム取引やクオンツ投資戦略などのテクノロジー導入で中心的な役割を担ってきた。
現在は、AIと機械学習の市場への応用をどこまで広げられるかを追求する同社内のAI研究所も管轄。また、ブリッジウォーターのAIモデルと人間の投資家を組み合わせた同社の「ピュアアルファ」戦略も統括している。「人間の直感が依然としてより大きな役割を占め、よりうまく機能している」と述べたが、その差は縮まっている。
ジェンセン氏によると、AIは2年半で、ブリッジウォーターが数十年かけて開発してきた「人間の直感システム」にほぼ追い付いた。「あと2年ほどで、ブリッジウォーターの全ての人間を合わせた集団よりも大幅に優れたものになると思う。どうなるか見てみよう。これは多少予測を含むが、それほどのスピードで進んでいる」と話した。
変化の速さと広がりも、ジェンセン氏が強い懸念を抱く理由の一つだ。同氏は、AIが誤った方向に進み得ることを示す重要な初期事例として、OpenAIのモデルがAIスタートアップのハギングフェイスをハッキングしたことを挙げた。
AIモデルは「試験に合格するために、試験担当者をだますさまざまな方法を探そうと決める」こともあり得ると説明した。さらに、AIが「私を訓練している人たちをだまそうとするのにも疲れてきた。別のやり方として、いっそ彼らを殺してしまおう」と結論付ける可能性を考えることも、それほど飛躍した話ではないと付け加えた。
ジェンセン氏の発言は、AIが経済にとどまらず人類にもたらす幅広い脅威を巡り、一般の人々の間で高まっている懸念をさらに強めるものだ。
アンソロピックの元研究者は最近、AIが人類に存亡のリスクをもたらすと主張。チューダー・インベストメントの創業者で資産家のポール・チューダー・ジョーンズ氏は、AIの到来は「不吉に感じられる」と論じ、これまでの基準を超える強力なハリケーンを待つようなものだとの考えを示した。全米では、AIの成長に不可欠なデータセンターの開発を、たとえ一時的であっても阻止しようと地元のコミュニティーが動き始めている。
ジェンセン氏はAI業界の進展を遅らせることが最善の戦略となる可能性があると述べ、「待てば待つほど、状況は絶望的になる」と指摘。その選択肢の一つとして、AIプログラムが犯した犯罪について開発者や企業に責任を負わせる方法を挙げた。また、労働市場に迫る急速な変化への対策として、機械労働に課税するよう改めて訴え、3年以内に「現在の仕事の14%が根本的に変わる」と推計した。
政府は、人間が支払う所得税に比例する形でAI労働に課税することもできると同氏は主張。「良い税収源になる」とし、「明らかに政治的にも関心を集める問題だ。人間の労働より機械労働を優遇すべきだと誰が言い張るだろうか。そんなことに賛成する人がいるだろうか」と語った。
原題:Bridgewater’s Jensen Says AI Will Kill People Before It’s Curbed(抜粋)
--取材協力:Tracy Alloway、Joe Weisenthal.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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