(ブルームバーグ):日本銀行は今週の金融政策決定会合で、植田和男総裁の下で最速ペースとなる6月以来の利上げを決める見通しだ。2%の物価目標の実現に向けた着陸態勢に入り、円滑な定着へ金融政策のかじ取りは難易度を増す。
複数の関係者によると、日銀は17、18日の金融政策決定会合で政策金利を0.25ポイント引き上げ、1.25%程度とすることを決める公算が大きい。過去1年間で3回目の利上げとなり、政策金利は1995年以来、31年ぶりの高水準となる。
一時的な要因を除いた基調的な物価上昇率は2%に接近しているが、金融環境は緩和的な状態が続いている。経済・物価が日銀の見通しに沿って推移する中、原油高やこれまでの円安などで物価が上抜けるリスクを回避する。基調の押し上げを狙い、半年に1回程度と慎重に利上げを進めてきた従来のアプローチからの転換といえる。
ブルームバーグがエコノミスト52人を対象に行った調査によると、今会合で政策金利を1.25%程度に引き上げると全員が予想。その次は58%が来年1月を、35%が今年12月を見込んだ。今後の利上げペースは、四半期に1回程度が46%で最多だった。
政策金利が1.25%になっても現在の緩和環境が劇的に変化することは想定しづらく、日銀は利上げ継続姿勢を維持する見込みだ。関係者によると、今後の利上げペースは経済・物価・金融情勢に応じて柔軟に対応する。市場は、先行きの利上げのペースと余地を声明文や植田総裁の会見から探ることになる。
植田総裁は1日の会見で、基調物価は目標の2%に「かなり近くなっている」と語った。日銀は2%に達する時期を「26年度後半から27年度にかけて」としており、間近に迫っている。目標実現の確度と現在地をどのように表現するかも注目だ。
楽天証券経済研究所の愛宕伸康チーフエコノミストは、7月の展望リポートに記された物価の基調に関する「2%の物価目標を超えて上振れていくリスク」と「2%程度の水準で安定させていく」との文章が声明文に残るかに注目。残れば物価上振れリスクの見方が変わらないこととなり、「次回利上げも3カ月後と想定される」と語った。
中立金利
もっとも、今回利上げすれば景気を刺激も抑制もしない名目の中立金利の領域に踏み入ることになる。日銀では、各種の推計に基づいた中立金利のレンジを1.1-2.5%としており、1.25%の政策金利は下限を超える。今後は緩和度合いを丁寧に点検していく重要性が一段と高まることになる。
日銀は2024年3月のマイナス金利の解除を含めて植田体制下で5回の利上げを行ったが、金融機関の貸し出しは前年比5%を超える高い伸びが続くなど引き締まり感はうかがえない。企業からも、これまでのところ金利上昇が経営の制約要因になっているとの声は目立っていない。
日本では超低金利環境が長く続いたため、企業の資金調達も長期で固定化されている割合が高く、日銀の利上げの影響が顕在化しづらい構図になっている。それだけに、今後急に緩和度合いが縮小することがないか、丁寧に点検を続ける一方、物価の上振れリスクには機動的な対応が求められる難しい局面に入る。
政治介入
利上げに慎重とされる高市早苗政権だが、関係者によると、政策金利の維持を決めた前回の7月会合後の植田総裁会見で、早期利上げに前向きな発言を行うことを支持する考えを事前に伝えており、今回は容認する可能性が大きい。直後に日米の通貨当局が円安是正に向けて協調で為替市場介入に踏み切ったことも日銀の背中を押した。
もっとも、その次の利上げに対する高市政権の姿勢は不透明だ。一方で、世界的に長期金利が上昇する中、ベッセント米財務長官の相次ぐ発言からは、日銀の利上げ継続への期待感もにじむ。日銀の金融政策を巡る方向性の異なる内外政治の口先介入が、引き続き市場の波乱要因と言えそうだ。
ソシエテ・ジェネラル証券の劔崎仁調査部長兼チーフエコノミストは、市場が想定する四半期ごとの利上げを現時点で高市政権は認めていないとみる。ただ、ペースが四半期ごとより遅くなると市場が織り込めば円安が進み、「米国から高市政権に圧力がかかる可能性が高く、結果的に3カ月ごとのペースを認めざるを得ない」と分析した。
ベッセント長官は8日、日米の協調為替介入など市場を巡る最近の判断に関し、日本当局や日銀の動きを「かなり正確に把握している」と発言。自身を「胴元」と表現し、「私の見方に反対して賭けたいなら、そうしても構わない」と市場をけん制した。
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