(ブルームバーグ):24日の米株式市場でS&P500種株価指数は反落した。原油安というプラス材料を、半導体株の下げが打ち消した格好となった。ベッセント米財務長官がイランを世界経済から孤立させる計画を打ち出したことを受け、その中身を見極めたいとのムードが広がった。
フィラデルフィア半導体株指数は一時、前週末比4.1%下落した。米半導体大手エヌビディアが26日に発表する決算では、同社が圧倒的な優位を維持していることがあらためて示される見通し。しかし、エヌビディア株はこれで7営業日続落と、2022年以来の長期下落局面となった。
エヌビディアの大口顧客の一部は、AI半導体を搭載したサーバーを値上げするとの通知を受けた。週末のこの報道を受け、メモリー領域に特化した上場投資信託(ETF)は5.9%安で引けた。ナスダック100指数は1%安で終えた。
ベッセント氏は記者会見で、「われわれは世界各地に広がるイランの金融ネットワークに対し、経済的な猛攻撃を開始する」と表明。「イラン政権を経済的に窒息させるものだ」とし、イラン資金の洗浄に関与する場合、ドルへのアクセスを遮断すると述べた。
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「米国による対イラン経済制裁の詳細や、米財務省による長期金利引き下げの取り組み、そして経済データが市場心理を大きく左右する可能性がある」と述べた。「エヌビディアをはじめとするハイテク企業の決算が、相場の勢いに大きな影響を与えそうだ」とも語った。

市場関係者は、ウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が28日にワイオミング州ジャクソンホールで講演を行う際、根強いインフレにFRBがどう対応すべきかについて、自身の見解を明確にすることにも期待している。
クエスター・キャピタル・パートナーズのリチャード・ライル氏は「米財務省が先週、債券市場で異例の措置に踏み切ったことで、ウォーシュ議長は難しい立場に置かれている。積極的な情報発信を好まないようにみえる議長にとっては、なおさらだ」と述べた。
米国債
米国債相場は長期ゾーンを中心に上昇(利回り低下)。10年債利回りは一時4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下して4.69%を付けた。
米財務省が国債買い戻しの資金に財務省一般勘定(TGA)を利用する可能性があるとのCNBC報道が材料視された。債券ディーラーは、財務省が1年以内に償還を迎える財務省短期証券(Tビル)など、より短期の国債を追加発行して買い戻し資金を調達するとみていた。
ただ、RBCキャピタル・マーケッツの米金利戦略責任者、ブレーク・グウィン氏はCNBCの報道内容を受けて、「現金残高に関する政策について十分に練られた議論というより、売りを食い止めようとするかなり場当たり的な試みに見える」と指摘。
手元資金を活用する可能性は「極めて低い」との見方を示した上で、むしろサイバー攻撃のリスクが高まる中では、手元資金の余裕を確保しておくことの重要性が増していると述べた。
原油安もこの日の債券市場への圧力を幾分和らげた。
ベッセント米財務長官は先週、長期債の買い戻し額を増やす計画を示して市場を驚かせた。市場の関心は同長官が次にどういった措置を講じるかだ。
ウォーシュFRB議長のジャクソンホール会合での講演も関心が高い。目標を上回るインフレにFRBがどう対処するのかに加え、長期の借り入れコスト引き下げを狙ったベッセント長官の介入に対する見解を示すかにも注目が集まる。
BNYのシニア・マーケット・ストラテジスト、ジェフ・ユー氏は「市場は今週、ウォーシュ氏がFRB議長として初めて臨むジャクソンホールでの講演を見据えた展開となるだろう」と述べ、「長期債がなお不安定な状況にある中、投資家は財務省の措置にFRBがどう対応するのかを知りたがっている」と続けた。
外為
外国為替市場では、ドルが他の主要10通貨全てに対して上昇。特にカナダ・ドルの対米ドルでの下げが目立った。
円は対ドルで小幅に下落。ニューヨーク時間帯に入ってからは、おおむね158円90銭台から159円20銭台の狭いレンジでの推移となった。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時、0.2%上昇。先週は週間ベースで0.8%下げていた。
カナダ・ドルは一時、対米ドルで0.7%下落。21日には一時、1米ドル=1.3732カナダ・ドルと、5月以来の高値を付けていた。
トランプ米大統領はカナダから輸入する自動車・同部品に関する関税を来年から2倍に引き上げると表明した。両国の貿易紛争が一段と激化する。
原油
原油相場は反落。ベッセント米財務長官が、イランを世界経済から孤立させるための「前例のない」取り組みを発表したが、原油相場への影響は限定的だった。
ベッセント氏は米国の措置について実施時期を明言せず、ホワイトハウスが具体的に何を計画しているかについても言及を避けた。記者会見後も原油価格はほぼ横ばいで、取引量も低水準のままだった。
北海ブレント10月限は前週末比2.22ドル(2.4%)安の1バレル=92.17ドルで終了。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)10月限は、同2.05ドル(2.4%)安の85.01ドルで引けた。
ベッセント氏は、イランと取引する国は米国の制裁を受けるリスクがあると警告した。また、トランプ米大統領が各国首脳に電話し、「イラン政権との関係を停止するよう具体的に要請している」とも説明。さらに、今週末までに主要な機関が制裁対象になる見通しだとした。
イランは制裁を巧みに乗り切ってきた実績があり、米政府の計画を支持する国には報復すると表明した。
ベッセント氏の記者会見後、米財務省は、イランによる核・ミサイル技術の不正な調達を可能にしているとして、世界各地の60の団体・個人・船舶を対象とする制裁の詳細を発表した。
米国がイランへの経済的圧力を具体的にどこまで強められるかは不透明だ。選択肢の一つとして、イラン産原油の最大の買い手である中国を標的にすることが考えられるが、その場合、米国側にも反発が及ぶリスクがある。
グローバル・リスク・マネジメントのチーフアナリスト、アルネ・ローマン・ラスムセン氏は「ベッセント氏がイラン政権を『屈服させる』ような策を打ち出せると考える市場参加者はほとんどいない」と述べた。
世界の原油価格は今年に入り50%超上昇している。6カ月目に入った米国とイランの戦争により、世界的に原油や石油製品の供給が滞っている。
金
金相場は3カ月超ぶりの高値に上昇した。米財務省が先週、長期国債の買い戻しを拡大すると発表したことが背景にある。これを受け、長期金利は一時低下し、ドルにも下押し圧力がかかった。
金スポットは一時1.7%上昇し、1オンス=4680ドルを上回った。日中ベースでは5月中旬以来の高値となった。先週は週間で5%超上昇し、3週連続高となった。
借り入れコストを直接介入によって抑える米国の取り組みは、ドルへの信認を弱めるとの懸念につながり、相対的に他の投資先の魅力を高めている。金が2025年に65%上昇する一因となった、いわゆる「通貨価値の希薄化(ディベースメント)」を巡るテーマが、再び意識されている。ドル建てで取引される商品相場には、ドル安は追い風だ。

グローバルX・ETFsのアナリスト、ジャスティン・リン氏は「ディベースメントの見方を背景に、マクロ投資家の資金が貴金属へかなり大規模にシフトする余地があるとみている」と述べた。
19日の発表後も、ベッセント米財務長官はさらに踏み込み、コストの高い国債の買い戻しを拡大する用意があると表明した。また、借り入れコストが数年ぶりの高水準にある状況に対処するため、政権が近く財政面の施策を発表する方針も示した。
ブリッジウォーター・アソシエーツ創業者で資産家のレイ・ダリオ氏は21日、リンクトインへの投稿で、米国の債務リスクに備えるため、投資家は債券の保有を減らし、資産の最大15%を金に振り向けるべきだとの考えを示した。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時24分現在、前週末比33.40ドル(0.7%)高の1オンス=4636.47ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、同17.20ドル(0.4%)高の4697.80ドルで引けた。
欧州
24日の欧州債券市場は、米国債の上昇が支えとなり、長期債が小幅上昇した。欧州中央銀行(ECB)が年末までに2回利上げするとの観測が強まったことから、短期債は下落した。
ドイツ30年債利回りは1ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下して3.76%となった。英30年債利回りも2bp低下し、5.79%となった。世界の長期国債は財政懸念の強まりを背景に、売り圧力にさらされている。米30年債利回りは24日に低下しているものの、引き続き2007年以来の高水準近くにある。
ドイツ2年債利回りは3bp上昇して2.86%だった。短期債が相対的に軟調だったため、イールドカーブはツイスト・フラット化した。短期金融市場は、ECBの年末までの利上げ幅を計45bpと織り込んでいる。見通しは21日時点から小幅に拡大した。
フランスでは、新年度予算編成に向けた財政懸念と政治リスクが重しとなり、10年債利回りが2008年終盤以来の高水準近くにとどまっている。フランス10年債とドイツ10年債の利回り差(スプレッド)は87bp前後となっている。
欧州株は薄商いの中、ほぼ横ばいだった。ストックス欧州600指数はほぼ変わらずで取引を終えた。旅行・娯楽セクターが最も高いパフォーマンスとなり、原油価格の下落を受けて、航空株が上昇した。
欧州株は好調な決算発表シーズンが終了して以降、方向感を欠いている。投資家は新たな相場材料を求め、フランスのインフレ統計や米国で今週開かれるジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)など、経済指標や中央銀行関連のイベントに注目している。
8月24日の欧州マーケット概観(表はロンドン午後6時現在)
原題:Stocks Fall as Chip Rout Overshadows Drop in Oil: Markets Wrap
Treasuries Gain With Bessent and Warsh Due to Set Direction (3)
Dollar Gains on Bessent Briefing; CAD Deepens Losses: Inside G10
Oil Dips as Traders Weigh US Economic Pressure on Iran
Gold Advances to Three-Month High as Debasement Trade Returns
Long-Dated Europe Debt Boosted by Treasuries: End-of-Day Curves
European Stocks Steady as Investor Focus Shifts to Economic Data(抜粋)
(原題の更新に伴い、情報を追加して相場を更新します)
--取材協力:畠山朋子.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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