(ブルームバーグ):米国でも有数の名門私立学校に通う費用は、かつてないほど高くなっている。年間授業料は平均で5万ドル(約800万円)近く、寄宿制では8万ドルに迫ることもある。しかも、修学旅行や寄付、その他の追加費用は含まれていない。
こうした学校はこれまで、授業料を全額負担できる超富裕層や、多額の援助を受ける低所得層から生徒を集めてきた。だが今、そのモデルに亀裂が生じ始めている。学齢人口の減少で生徒獲得競争が激しくなる一方、授業料の高騰を受け、裕福な家庭でさえ二の足を踏むようになった。
そこで学校側は、これまで目立たない形で提供していた割引や生活費調整、給付金、柔軟な授業料設定を積極的に宣伝し始めている。授業料を全額支払える富裕層だけでなく、ある程度なら負担できる家庭にも対象を広げている。
ニューヨークにある通学制の名門女子校ブレアリー校は2025年、年収10万ドル以下の家庭を対象に授業料を無料とし、20万ドルを超える所得水準まで段階的に授業料を設定する制度を導入した。
マサチューセッツ州のディアフィールド・アカデミーも2024年、年収15万ドル未満の家庭は授業料を支払わず、それ以外の家庭についても負担額を年収の10%以下とすると発表した。
その年の秋、マサチューセッツ州西部で教師をしているキャディさんとパトリックさんは、14歳の息子と共に緑豊かなディアフィールドのキャンパスを見学した。夫婦の年収は合わせて15万ドル未満。同校にはホッケーリンクや15面のスカッシュコート、ロボット工学施設、プラネタリウムなどがそろっている。
「ディアフィールドは、通える可能性がないならむしろ見学に行ったことを後悔してしまうほどの素晴らしい学校だ」とキャディさんは話す。一家はコーチや教師、他の生徒とも会った。見学が終わる頃には、「息子はここに通う自分の姿を思い描き、本当にわくわくしていた」とパトリックさんは語った。一家の希望により、プライバシー保護のため名字は掲載していない。
「中間層」の定義
学校側が「中間層」と呼び、取り込みを図る家庭の多くは、世帯所得が米国の中央値である約8万4000ドルを大きく上回る。学校によっては、年収約15万ドルから50万ドル超の家庭までが学費援助の対象となり得る。
教育コンサルタントのホリー・トリート氏は「学校側は、さまざまな社会経済階層の生徒を確保したいと考えている。そのため世帯年収が合わせて50万ドルの家庭というのは、非常に興味深い層だ」と指摘。「学校はこうした家庭なら、割引分を差し引いても十分な授業料収入を確保でき、優秀な生徒の獲得にもつなげられる」と述べた。
マサチューセッツ州の寄宿学校グロトン校は、この層を「これまで十分に取り込めていなかった優秀な中間層」と呼ぶ。同校は2025年、年収15万ドル以下の家庭を対象に授業料を無料とした。それ以前は、無料の対象を年収8万ドル以下の家庭としていた。
こうした変化の背景には、授業料の高騰により、理屈の上では支払える家庭にとっても私立学校がますます受け入れ難い選択肢になっていることがある。ディアフィールド校の校長を務めるジョン・P・N・オースティン氏は「授業料の伸びは家計所得の伸びを上回っている」と話す。同校は名門大学による同様の動きに続き、学費援助制度を拡充した。
投資顧問会社スマートアセットの推計では、4人家族が快適に暮らすには、サンアントニオやニューオーリンズでさえ年間およそ20万ドルが必要だ。ニューヨークでは34万ドル近くに上る。
全米独立学校協会(NAIS)が2023年末に実施した調査によると、授業料を段階制や所得連動制で設定する柔軟なモデルを採用している米国の私立学校の約3分の1が、調査前の1年以内にこの制度を導入していた。さらに20%は調査実施の1-3年前には導入しており、大半が入学者数の増加を理由に挙げた。
微妙なバランス
大半の学校では、授業料を全額支払う家庭の数が、学費援助を受ける家庭をなお上回っている。ただ、生徒数を確保するため援助を拡大する学校が増えている。NAISの教育機会・学費負担軽減担当バイスプレジデント、マーク・ミッチェル氏は、学校側は学費援助を拡大し過ぎることより、入学者数が定員に満たないことを懸念していると話す。
資金力には学校間で大きな差がある。グロトン校は2014年以降、学費援助制度のため1億ドル超を調達し、ディアフィールドの基金は2025年6月時点で10億ドル超と評価されていた。一方、NAIS加盟校の基金の中央値は約900万ドルだ。
援助拡大には財務リスクも伴う。昨年、幅広い所得層の家庭を対象に段階的な授業料を設定していたニューヨークのマンハッタン・カントリー・スクールは、授業料を全額支払う家庭が減り過ぎた結果、閉校した。
原題:Elite Private Schools Offer Aid to Families Making $500,000(抜粋)
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